初音ミクを生んだ伊藤博之氏が考える、コンテンツ産業の未来形:New Order ポスト・ジョブズ時代の新ルール(4/4 ページ)
個人の創作活動が音楽シーンでの存在感を増している。「音楽ビジネスは、共感ビジネスへ向かう」と予測する、『初音ミク』の生みの親である伊藤博之氏。ネットワーク時代のコンテンツ産業のあり方について語る。
作り手に求められる、ユーザーの「共感」を呼ぶストーリー作り
伊藤 これまでのコンテンツ産業はメディア――特にテレビなどのマスメディアに依存していました。ところが今では、個人のネットワークがメディアになってきています。既存のマスメディアが力を失ってきた結果、全国一斉に同じ情報を大量に流す手法が、どんどん効かなくなってきている。
音楽産業でも、例えばAKB48のCDが売れていると言っても、あれはグッズとして買っているわけで、純粋に音楽を買うという行為自体が、あまりなじみのない消費になってきているように感じています。その点で、音楽配信ビジネスだって盤石ではない。そういう時代に、何をもって消費させるのかを考えていく必要があります。
CDという板を消費させようとしても、誰も買おうとは思わない。なぜ音楽を買うのかといえば、そこに共感があるからです。ならば「共感できる」と思えるストーリーを、アーティストが自ら発信していく。それを発信する場は、マスメディアである必要はなく、ソーシャルメディアでいい。
情報通信という技術の上に、音楽や映画、ニュースなどさまざまなコンテンツが流れていますが、情報通信の“情”とは、人間の感情のことだととらえています。特に音楽というのは、人の感情を伝えていく非常にアトラクティブなインフラだと思いますね。
初音ミクがそうであるように、感情の伝播が重層的な創作に飛び火していき、多様なコンテンツが生まれ、総体として1つのビジネスになっていく。コンテンツビジネスが共感ビジネスになった時、また違う形での広がりが期待できるのではないでしょうか。
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