北朝鮮の“人工衛星”打ち上げが意味すること:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
“人工衛星”の打ち上げをあくまでも強行する姿勢の北朝鮮。緊迫する朝鮮半島情勢を象徴する出来事だが、日本はこうした防衛問題についての議論ができる状況にあるのだろうか。
日本人は防衛問題を真剣に考えられるのか
中国や韓国だけではない。米国もロシアもそして日本も北朝鮮崩壊による極東の混乱は望まない。いわゆる6カ国協議がなかなか進まないのは、中国のリーダーシップ不足という面もあるかもしれないが、それよりも基本的にあまり打つ手がないからだと思う。
このことを逆に言うと、北朝鮮が何をしようと、こぶしを振り上げるふりはしても、本気で制裁をして、金正恩体制を崩壊させるようなことは誰もしたくないということだ。その点が、核兵器やミサイル開発で対立するイランとは異なるところだ。
北朝鮮がミサイルの発射実験を実行すれば、米国は一応制裁を口にするだろうが、どう言おうと国連の安保理で強い決議が出される可能性はほとんどない。中国は反対するだろうし、ロシアもひょっとすると反対するかもしれない。食糧援助というカードが頼りないカードであっても、それがある限りは米国が強硬に何かをする可能性はほとんどあるまい。
ただ問題は、そうしている間に、北朝鮮の核武装化が着実に進み、核弾頭を搭載したミサイルの照準が日本や米国に向けられるようになることだ。その時、日本はどうするのだろう。中国やロシアと違って、北朝鮮の外交は安定しているわけではない。何をするか、どのような計算に基づいているのかが外からはよく分からない。そういった国のミサイルが自国に向けられているということが分かれば、日本国民としては安穏として不戦平和というぬるま湯に浸っているわけにもいかないだろう。
そんな状況にあるのに、沖縄の普天間基地移設問題では米国との間がギクシャクし、日本の自衛隊は「老齢化」が進んでいる。海上自衛隊など新鋭艦を建造したとしても、それを動かせる人員を確保することができないという話も聞いた。陸上自衛隊も若者を確保するのに汲々としている。
北朝鮮のミサイル発射に備えてイージス艦やPAC3で迎撃するという命令を出している。しかしこうした備えで日本のミサイル防衛が万全であるはずもない。日本がこれから少ない資源(ヒトやカネ)でいかに効率的に防衛するか。この問題に簡単な解はないが、真剣に考える必要があることは間違いない。ただ、防衛問題を戦後66年間、真剣に考えたことがないだけに、果たして成熟した議論がどこまでできるか、防衛大臣のみならずはなはだ心許ないのである。
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