MBAの時代は終わった!? “事業構想力”で日本のビジネスを元気に:嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(4/4 ページ)
今年4月に開学した事業構想大学院大学。1学年30人という少人数制で行われる教育は、“事業構想”に特化したものだという。従来の社会人大学院などとはどのような点が異なっているのか、東英弥理事長に尋ねた。
事業構想大学院大学で利益を出す?
ここまで事業構想大学院大学の特徴や教育方針などについてご紹介してきたが、読者のみなさんは、こう思っているのではないだろうか?
「これで本当に経営的に成り立つの?」
確かに、毎年30人の院生しか入学しないのに、専任の教授陣10人に加えて毎年100人を超す客員教授を招聘するとなると、「ペイするわけがない」と思われても不思議ではない。
東さんはほほえみながら、そのカラクリを教えてくれた。
「ここでの大学教育だけですと、1人当たりの入学金10万円、年間授業料160万円ですから、年間5000〜6000万円の赤字になってしまいます。そこで、この大学の付属機関である事業構想研究所で各種の受託プロジェクトを推進し、利益を出していきます」
事業構想大学院大学を今後どのように発展させていくかについての東さんの構想は気宇壮大だ。
「向こう5年をメドに、47都道府県すべてにこれを作り、各地域の活性化を促進してゆきます。そして10年後には授業料を無料にします」。
かつて「経営者の最も大切な仕事は、社内にどれだけ多くの“小英雄”を作れるかということです」と語ったビジネスリーダーがいたが、松下幸之助氏や、本田宗一郎氏、あるいは盛田昭夫氏を彷彿とさせる、その小型版でもよいから、そうしたイノベーターたちが47都道府県にあふれ返るようになれば、地域の復興と活性化、ひいては日本全体の活力回復が実現するだろう。
それにしても、東さんは、なぜそこまでしようとするのだろうか?
「私は、日本のすべての地域において、職を求めるすべての人が就業している状況を実現したいのです。40〜60代の方々が田舎に帰っても、ちゃんと仕事のある社会を作りたいと思っています」
東さんの思いは熱い。25歳で起業して以来、実に11社もの、しかも業種の異なる企業の経営に携わり、すべて黒字経営を実現してきたという東さんの今後の手腕に大いに期待したいものである。
嶋田淑之(しまだ ひでゆき)
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
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