「勝った!」「儲けた!」で得るモノ、失うモノ:ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)
お金のやりとりや交渉事などで、「得をした!」ということがあるかもしれません。しかし世の中、「何かを得た時は、何かを失う」もの。その結果が何をもたらすのか、冷静に考えてみることが大切です。
何かを得た時は、何かを失う
基本的には「得しただけ」なんてないんです。駆け引き、交渉事、取引の基本は「何かを得た時は、何かを失う」ということであり、「何かを譲れば、何かを得ている」ということです。「勝った!」「得した!」だけなどということはありえません。
“WIN-WIN”(両方にメリットがある)という言葉がよく使われますが、反対に言えば、WIN-WINでない限り、常にWIN-LOSEの関係にあります。
そしてこの“WIN-LOSE”を、「自分がWIN、相手がLOSE」と解釈するのは間違いです。そうではなく、自分の中にWINとLOSEの2つが残るのです。
だから、自分にとってどうでもいいことなら、どんどん人を助けてあげればいいし、譲ればいいのです。それはいわば「世の中に貯金する」行為です。反対に、あちこちで自分の主張を通すのは「世の中に借金を作って歩くような生き方」です。
お金の借金は簡単に返せますが、人や社会への借りはなかなかゼロクリアできません。つまらないものを得るために、大事なものを失うのは馬鹿げています。
しかもお金の場合は、人は自分の借金を自覚していますが、あちこちで自分の主張が通っている人は、自分が借りを作っている、ということに無自覚です。“自覚のない借り”ほどやっかいなものはありません。
できるだけたくさん、あちこちで“譲り、助け、許して”おきましょう。それは「社会に貯金をする」、もしくは「社会に資産を持つ」行為です。わざわざ回収になどまわらなくても結構な確率でそれは戻ってきます。
反対に「ちょっと強く言ってみたら主張が通った」とか喜んでいると、増えるのは「借りばかり」になってしまうでしょう。むやみに人に勝とうとしないこと、むやみに自分の意見を通そうとしないこと。そっちの方がだんぜん得なのです。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」。
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