尖閣諸島騒動の裏で、「かつお節工場」が狙われている:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
石原慎太郎都知事がぶちあげた「尖閣諸島の買い取り」。中国だけではなく政府も巻き込んでかなり波紋を広げているが、この騒動に乗じて日本の生命線が危険にさらされている。
「世界一幸せな国」を襲った不幸な侵略
「世界一幸せな国」として知られるブータンと、中国(チベット自治区)と接するあたりは、山奥でほとんど人がおらず、漢方でおなじみの冬虫夏草(とうちゅうかそう、ふゆむしなつくさ)がとれ、ヤクの放牧にも適していた。要するに、尖閣諸島と同じく「豊富な資源」の眠るところだった。
そこへある時、人民解放軍がひょいと領土をまたいで、しれっとした顔で「掘ったて小屋」を建てた。抗議すると、中国は「おまえらの領土だって証拠はどこにある?」とばかりに新しい地図をつくって、こう言い放った。
「絶対に譲れない」――。
結果、ブータン国土は約4万6500キロ平方メートルからおおよそ2割減の約3万8400キロ平方メートルになった。今も交渉中だが相手が悪い。もう取られたと思った方がいい。
国土を奪われるというのは、国家元首にとっては身体を切り刻まれるよう苦痛である。そんな心労がたたったブータン国王夫妻を、日本のマスコミは嫌味のように「世界一の幸せ者」とヨイショ攻めにした。なかでも際立っていたのが『朝日新聞』で、わざわざ今年の正月の社説で「ひとつの未来をみいだした」として、日本人はブータンを見習うべきだと綴っていた。
その『朝日新聞』が都知事の「尖閣諸島買取」に対して「無責任だ」と批判し、尖閣諸島問題は放っておけ、「日中両国民がお互いに批判しあって、何か得るものがあるのか」と言いだした。
大方、「尖閣諸島を奪われたって、幸せが得られればいいじゃないか」などと言いたいのだろうが、あいにく日本人はそこまでブータンに憧れていない。
ちなみに朝日新聞といえば、文化財に助成をする財団ももつ。どうすれば「かつお節工場」を文化財にできるかを説いてくれた方が、よほどためになる。
関連記事
- 借金大国日本で“踏み倒す人”が急増している理由
国民年金、給食費、授業料、治療費……今、公的な支払いを踏み倒す人が増えている。この背景には、いったいどんな「裏」があるのだろうか? - 「従軍慰安婦」抗議からみえる、日本で起きるデモの未来(前編)
抗議デモを「参加者目線」でレポートしていく本連載。4回目は「従軍慰安婦」問題へ抗議する人々に密着する。テレビでは「右翼団体ら」と報じられた彼らの姿から、「日本の抗議デモ」の未来がみえてきた。 - フジテレビをデモる人が狙う、“次の標的”ってどこ?
抗議デモを「参加者目線」でレポートしていく本連載。今回は最近の“デモブーム”の火付け役ともなったフジテレビ抗議デモに密着した。今夏にお台場をシュプレヒコールとともに席巻したあの人々は、今どうしているのだろうか。 - 覚せい剤を密輸した男が明かす、北朝鮮の仕事術
「人工衛星」騒動で北朝鮮が注目を集めている。ビジネスパーソンとしては「相変わらずよく分からない国だな」ぐらいしか感想はないだろうが、実は彼らから学ぶこともある。それは、我々日本人が忘れてしまったものだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.