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コラム

株価が下がってもリニアを貫く、JR東海の事情杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)

JR東海の中央新幹線計画(リニア)は、趣味的にも、経済的にも期待のプロジェクトだ。しかし、この計画を快く思っていない人々もいる。機関投資家だ。JR東海がリニアを語ると、彼らはため息を漏らし株を手放す。

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リニアを急ぐJR東海の事情


(出典:JR東海)

 JR東海がリニア中央新幹線を自力で建設・開業させる。その理由は「国の施策を待ちきれないから」である。全国新幹線鉄道整備法に基づく国の基本計画では、告示された順序で建設への取り組みが行われる。その順序とは、1971年に告示された東北新幹線・上越新幹線・成田新幹線、1972年に告示された北海道新幹線・北陸新幹線・九州新幹線(鹿児島ルート・長崎ルート)で、1973年にやっと中央新幹線が羽越新幹線や四国新幹線が出てくる。

 そして、現状では中央新幹線より先に告示された新幹線が開業できていない。北陸新幹線は2014年に金沢まで開業予定だが、北海道新幹線の札幌開業は2035年の見込み。このままでは、中央新幹線はその後の取り組みになるし「全国に新幹線を」のスローガンのもとで、羽越・四国・東九州の後回しにされかねない。東名阪はもう新幹線があるからいいじゃないか、という声もある。

 しかしJR東海はそれを待てない。なぜなら、東海道新幹線を全面的に改修する必要があるからだ。東海道新幹線は1964年の開業から48年も経っている。しかも東京オリンピックに間に合わせるため、わずか5年間の突貫工事だった。鉄橋の交換、盛土の打ち直しや補強などが必要だ。すべての構造物に対し、新しい防災・安全基準も取り入れたい。

 国鉄時代に新幹線を利用した人なら、新幹線の半日運休を覚えているだろう。1976年から1982年にかけて、平日午前中に新幹線を運休して若返り工事を実施した。レール交換や架線の張り替えなどだ。市販の時刻表には、0系新幹線を顔に見立てて手をはやし工具を持たせたキャラクターが描かれていた。これは新幹線の高速運転が想像以上に設備を劣化させていたからだ。

 東海道新幹線の保守作業は、現在は適切な計画によって夜間のみにとどまっている。しかしJR東海によると、今後は1500連もの鉄橋の架け替えなど、全線にわたる大規模な改修が必要だという。そこで運休を伴う大規模改修工事を実施したい。そのバイパスとしても中央新幹線が必要だ。

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