ソーシャルゲームにはどんなものがあるのか?:ソーシャルゲームのすごい仕組み(2)(4/4 ページ)
コンプガチャ問題で揺れるソーシャルゲーム業界。しかし、ひと口にソーシャルゲームといっても、そのジャンルや課金のポイントは多様だ。どんなソーシャルゲームがあるのか紹介していこう。
ソーシャルゲームを手がける会社
さて、ここまでも多くの会社名が登場し、読者の中には少々混乱された方もいるかもしれない。新聞やテレビなどの報道、コマーシャルを賑わすGREEやモバゲーのDeNA以外にも、ソーシャルゲームには数多くの会社がそれぞれの役割や狙いを持って参入している構図がそこにはある。
まず、現在の主役ともいえる、GREEとDeNA。DeNAは1999年創業、GREEはそれに遅れること5年の2004年に会社を設立している。いずれも大手ゲーム会社などと比べると社歴は短く、同年代に起こったインターネットバブルの波を大きく受けたインターネットベンチャーだった。
GREEは代表取締役社長の田中良和氏が、東京ゲームショウなどで自ら登壇しそのビジョンを語ることが増え、テレビや新聞記事などでその姿を見る機会も増えた。
またDeNAは、2011年にプロ野球球団横浜ベイスターズの買収で、IT業界のみならず広く注目を集めることになった。
その出自やソーシャルゲーム事業に至る過程などは後ほど第2章で詳しく追うが、まずこの2社はソーシャルゲームの「プラットフォーム」を整備し、運営するのが事業の肝となっている点は押さえておきたい。逆にいえば両社がにらみ合う訴訟や話題を集めた球団買収はその本質ではない。
ユーザーを集め、ラインアップしたゲームに誘導し、ユーザーができるだけ快適・活発にゲームをプレイできるよう環境を整えていく。携帯電話とスマートフォン、そしてそのOSによって決済における役割は異なってくるが、プレイヤーから見たときのいわば「窓口」となる存在だといえるだろう。
GREEとDeNA自身もソーシャルゲームの開発を手がけているが、売り場としてのプラットフォームに並べられている多くのゲームは、ほかの会社(SAP=ソーシャルアプリケーションプロバイダー)が提供するものがほとんどだ。従来の家庭用ゲーム機の世界でいえば、プラットフォームを開発・運営しながら、自らもキラーソフトを開発するSCEや任天堂と、そこにゲームを提供するコナミ、ナムコ、カプコンといったサードパーティ各社が参加するという構図にそれはよく似ている。
ソーシャルゲームプラットフォームにゲームを提供する会社も、プロジェクトを取り仕切る企業と、各種機能を提供する制作会社という役割分担が行われることも多い。ソーシャルゲームのリッチ化、大型化が進むなかで1社が1つのゲームのすべてを提供するというのはなかなか難しくなってきている、というのが現状だ。コナミがGREEで展開する「ドラゴンコレクション」も、実際にはゲーム部分の開発、インフラ部分の整備、データ解析などを複数の会社で分担して取り持つという形を取っている。見た目のシンプルさとは異なり、ソーシャルゲームでは、いわゆる「ビッグデータ」と呼ばれるような膨大なユーザーの行動履歴が蓄積され、その分析に基づいて日々刻々と改良が行われている。そのため、昨今の高機能な家庭用ゲーム機向けの開発と引けを取らない体制が取られているのだ。
GREEとDeNAが厳しい競争を繰り広げるなか、人気ゲーム、そしてそれを開発できる一連の会社をいかに確保するかが両社にとっての大きな課題になっているのは想像に難くない。先ほど、ゲームが類似していることをめぐって訴訟が発生した例を挙げたが、ゲーム会社のプラットフォーム選択を拘束したとして、公正取引委員会が調査に乗り出すに至っている。この問題についても後で詳しく考えていくが、「プラットフォーム事業者」「SAP」「ソーシャルゲーム開発会社」の3つのプレイヤーが互いに必要な機能を提供し、時には混乱や衝突を起こしながらも急速な進歩を遂げている、ということをここではまず押さえておきたい。(次回に続く)
ソーシャルゲームのすごい仕組み
この連載は4月10日に発売された『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)の第1章から抜粋、編集したものです。
まつもとあつし氏のプロフィール
ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。DCM修士。ネットコミュニティーやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、ITを切り口としたコンテンツビジネスの取材・コラム執筆を行う。著書に『生き残るメディア 死ぬメディア出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)、『スマートデバイスが生む商機見えてきたiPhone/iPad/Android時代のビジネスアプローチ』(インプレスジャパン)、『スマート読書入門』(技術評論社)など。
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