コラム
南相馬市にあるコンビニ……そこは時間が止まったままだった:相場英雄の時事日想・南相馬編(2)(2/6 ページ)
津波によって破壊され、原発事故によって避難を余儀なくされた福島県南相馬市は、いまどのような状況になっているのか。現場に足を踏み入れた筆者が目にしたものは、昨年の震災以降、完全に時間から切り離された街の姿だった。
改めて考え直した。
ここは20キロ圏の内側、福島第一原発まであと10キロの地点だ。店の横に移動する。その途端、異臭が鼻腔を刺激し、事情が判明した。
震災直後か、または政府による規制線が引かれたあとなのかは分からないが、このセブン-イレブンは破壊され尽くした店舗だった。
生臭いを通り越した異様な臭気が充満する場所だった。鳥、あるいは犬、猫の糞の臭いに、食品が腐敗した臭いが重なる。
店舗の窓硝子は破壊され、人間が荒し回った形跡もある。獣が餌を求めたと思われる足跡も見えた。
神奈川県警の車両は、ミネラルウオーターを買うためではなく、コンビニがこれ以上荒らされないよう、パトロールしていたのだ。
ぽっかりと空いた店舗の横っ腹、新聞スタンドに日刊スポーツがあった。見出しに目を向ける。坂上二郎さんの死を伝える紙面だった。
二郎さんが亡くなったのは、昨年の3月10日だ。この日刊スポーツは翌11日の紙面、つまり震災当日の販売分だ。
震災後にこのコンビニに立ち寄った誰かが写真を撮るために置いたのか、あるいはあの日からそのままの状態が保たれていたのかは判断がつかない。ただ、この店舗は、確実にあの日から時間が停止していた。
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