野田×小沢会談の決裂が明らかにしたもの:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
野田首相と消費税率引き上げ関連法案に反対する小沢元代表との間で行われた2回の会談。双方の歩み寄りが困難であることが明らかになったが、この結果は何を意味するのだろうか。
本来的にやるべきことは社会保障給付の削減
民主党は、2009年のマニフェストで、いわゆるリベラル的な政策を描いて見せたが、財源問題と政策の整合性でつまずいている。それにもし野田首相が、日本の財政状況から言ってこの「一体改革」が待ったなしであると言われるのなら、本来的にやるべきことは、社会保障給付の削減でなければならない。
もともと現在、約22兆円ほどある「基礎的財政収支の赤字」を埋めるために、消費税の増税だけでやるのは無理な相談なのだ。なにせ22兆円といえば、消費税でいうと11%分に相当する。2015年までに10%に引き上げても、まだ5%分は上げなければならない。もちろん経済が政府の目論見どおり名目3%実質2%も成長すれば話はずいぶん違ってくるが、デフレから脱却することもままならない状況で、それほど成長力があるとはとても思えないのである(今年の第1四半期は年率4%を超える成長率だったが、これは「復興特需」があるからで、今年後半は息切れが心配されている)。
それに今年の予算で最大の支出項目である社会保障関係費と地方交付税交付金は合計で約43兆円。しかもここは現在の制度のままでも毎年1兆円以上増えるのである。今年から団塊の世代が前期高齢者に入りはじめたから、医療費も増えることが予想されている。そうであれば、例えば老人医療費の窓口負担の軽減措置は止めなければならないだろうし、国民背番号制の導入による所得の把握とそれに伴う社会保障費や医療費の無駄の削減などが喫緊の課題だ。つまり社会保障関連の支出を持続可能な形にしないと、ただただ野放図に支出が増えて、「低福祉高負担」の国になりかねない。
自民党も妙な妥協をせずに、過去の反省も込めて持続可能な日本の形を追求すべきだと思う。6月21日の会期末を控えて、いろいろな政治的思惑が交錯するのだろうが、日本が現在抱えているトラブルを解決できるのかできないのか、その時限爆弾も時を刻んでいることを、政治家は忘れないでもらいたいものだ。
関連記事
- 緊縮財政か成長戦略か、欧州が問われる選択
G8サミットで、欧州発の金融危機に対して、「緊縮一辺倒だけでなく、成長戦略も重視せよ」というメッセージを出したオバマ大統領。とはいえ、下手に金融を緩和し、財政支出による景気刺激策を取ればハイパーインフレを招く可能性もある。 - ユーロ離脱やむなし、ギリシャ国民の選択とは
ギリシャ総選挙では、大方の予想通り「反緊縮派」の大勝利となった。この結果浮上してきたのが、「ギリシャのユーロ離脱やむなし」という突き放した見方である。 - 財政再建か国民の生活か、フランス・ギリシャの選挙の意味
5月6日、欧州ではEUやユーロ圏の行方を占う2つの大きな選挙が行われた。フランスの大統領選挙とギリシャの議会選挙である。財務危機に対する緊縮財政がもたらした景気の悪化に、国民はどのような回答を付きつけるのだろうか。 - 藤田正美の時事日想バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.