なぜ飯島愛の公式ブログはちゃんと管理されているのか?:新連載・古田雄介の死とインターネット(3/3 ページ)
管理人の死後、オンラインに残されたブログやSNSなどの“遺産”はどのように扱われるのか。利用規約の先にある、実際の処理が行われている現場のいまを探ってみよう。
お墓をスパムで荒れ放題にしないために何ができる?
冒頭で触れたように、亡くなった後のページにもさまざまなパターンがある。HTMLで書いたWebサイトは、閲覧者の痕跡が一切残らないコンテンツとして残る場合が多いが、自由に書き込みできるブログやSNSページは、何年経っても友人やファンからの哀悼メッセージが添えられるお墓のような場にもなりえる。だが一方で、スパム書き込みによって荒れた空き家のようにもなりえる。前者のような、「ちゃんとしたお墓」にするにはどうすればいいのか。
整ったお墓の典型例は、飯島愛氏の「ポルノ・ホスピタル」だろう。2008年12月5日にアップされた最後の日記には、現在まで6万8000件以上の書き込みがなされている。膨大な書き込みの中には、スパム的な書き込みが一切ない。これは、有名人ブログの書き込みをチェックするアメーバブログ運営のコメント監視サポートが現在も生きているため。管理人は他界しているが、企業による必要最低限の管理はなされているというわけだ。
もちろん一般的なブログではここまでのケアは難しく、何も手を打たなければ完全な管理不在の状況になる。管理を任せられる人がいるなら「コメントを承認制にしたり、禁止IPアドレスを登録したりして、遺族の方に定期的に管理していただくのがいいと思います」(Ameba広報)と、人力でケアしやすい環境を保つのが現実的だ。
ただし、厳密にはアカウントの譲渡となるため、規約違反になる場合がある点には留意しておきたい。誰にもIDを託さずに墓場に持ってくのも、1つの手だ。コメント承認制のブログはそのサービスの事業が終了するまで、最後にアップデートした状態でネットに残り続ける。
一方、mixiはユーザーの属性を問わずサービス内のアクション全般をカスタマーサポートがチェックしているので、コメント書き込みを一般公開していても荒れる可能性が低い。ミクシィ広報も「その方の周りの方が望むのであれば、哀悼のページとして残すのは問題ないと思います」と、お墓としての利用法を認めている。生前の友人や家族など、特定のユーザーだけ訪れるお墓を想定しているなら、いい選択肢になるだろう。
ただし、ユーザーの死後の対処については、多くの事業者が向き合いはじめたばかりということを忘れてはならない。今後様々な取り組みやなされ、数年後には常識が変わっていることも大いにあり得るのだ。次回は、ネットの世界で死と向き合う最前線にいる、生前準備ツールを提供するサービスの現状を紹介したい。
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