コラム
大阪都構想のカギを握るのは、モノレールかもしれない:杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)
大阪府の松井知事が、大阪モノレールの延伸を検討する。大阪モノレールは大阪万博の輸送手段として計画され、その後も延伸計画が何度も現れては消え……。果たして今回は実現するのだろうか。
堺市延伸で関空アクセスが見えてくる
そう考えると、大阪モノレール南下延伸は「大阪空港を便利にするため」ではなさそうだ。むしろ、大阪空港を縮小した場合を考えてのことではないか。大阪モノレール方面の乗客が減れば収益が悪化する。経営安定化と民営化のためには、新たな収益源を確保する必要がある。そこで当初の計画を進め、放射状の私鉄、JRと接続して新たな乗客を確保しようとしているのだ。
計画通り堺市まで延伸すれば、そこから南海電鉄、JR阪和線と接続して関空方面のアクセス路線にもなる。大阪府の本心は近鉄奈良線までの延伸ではなく、堺市までの完成にある。大阪モノレールは大阪国際空港アクセス路線から、関西国際空港アクセス路線へ転換する。そうなると、大阪都構想のなかで、大阪モノレールの重要度が増してくるだろう。松井知事の大阪モノレール延伸表明は、堺市へ接続させる布石ではないだろうか。
ちなみに大阪モノレールの本線・彩都線を合わせた営業距離は約28キロメートルで、モノレール路線としては世界最長だった。ギネスブックにも登録されていたが、2011年に中国の重慶でモノレール路線が2つも延伸し、合計営業距離が約58キロメートルとなって追い越されてしまった。大阪モノレールが「完成」すると60キロメートルを少し超えそう。鉄道ファンとしては、世界記録が更新されるかどうか、ワクワクするところでもある。
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