“決められない政治”は民主党だけの問題ではない:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
消費税増税法案への賛否で揺れる民主党。しかし、国の財政は消費税を少し上げただけでは改善は不十分で、根本的には社会保障費に手を付けなければならない。しかし、日本にはそこに切り込める責任政党は存在しないのである。
決められない政治
日本の場合、このリベラルと保守の違いはあまりはっきりしない。そして世界的にもその境界はあいまいになっているように見える。1つの理由は、イデオロギーの時代が終わってしまったことだ(単純化して言えば、ベルリンの壁の崩壊は、イデオロギーの壁の崩壊でもあった)。もう1つは、世界的に国の財政が厳しくなっていることだ。懐が厳しくなれば、欧州の社会民主主義の国も基本的には福祉を抑制せざるをえない。
その意味では、自民党を中心とする保守勢力、民主党を中心とするリベラル勢力という色分けが一応できたとしても、その政策にどれほどの違いがあるのか。思想的にもそうだが、何と言っても国の懐には社会保障を充実させるような余裕はない。
生活保護を受けている人が200万人を超え、国民医療費はすぐにでも40兆円を超え、社会保障給付費は2015年度に120兆円を超える。そして医療費や介護費用は、団塊の世代が高齢者の仲間入りするあたりからどんどん増えて、社会保障給付費で見れば、2025年には150兆円を超える。
もちろん税金で負担する分も増える。その意味では、増税するだけでこうした負担をまかなうのは到底無理だ。何せ消費税といっても5%は国税で10兆円でしかない。今でも20兆円以上の基礎的赤字があるのに、10兆円ぐらいの増収になっても間に合うはずがないのである。経済成長戦略が思うように効果を発揮できなければ、さらに増税することは避けられないだろうし、それは経済を圧迫することになる。
このような状況だからこそ、数の多い団塊の世代に向かって「社会保障の給付制限をする」と提案することが責任政党の役割だと思うが、それを言える政党はいない。それは当然だ。言えば選挙で負けるからである。こうして見ると、日本の決められない政治は、決して民主党だけの問題ではない。日本全体の閉塞感とコインの裏表のような関係にあるのかもしれない。
それでも「壊し屋」小沢元代表に期待するのか、それともいっそ政治に愛想をつかして、誰でもいいから(独裁者でもいいから)強烈な個性に委ねるのか、それとも決められない政治のまま嵐の海をよろよろと漂うのか、我々の選択肢はどれも希望のないものになりそうだ。
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