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人権派の人殺し、本当は怖いオバマ大統領伊吹太歩の世界の歩き方(1/3 ページ)

ハーバード大学の法科大学院に学び、法律評論誌の編集長を務め、憲法学の教鞭を執った経歴を持つオバマ大統領。彼は“チェンジ”してしまった。

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著者プロフィール:伊吹太歩

世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材し、夕刊紙を中心に週刊誌や月刊誌などで活躍するライター。


 世界を見渡せば、2012年は政治的な変化が続いている。例えば、フランスの大統領選では、ドイツと足並みを合わせて欧州の経済危機で賛否が議論される緊縮政策を進めようとしたニコラ・サルコジ大統領が、それに反対する社会党のフランソワ・オランドに破れた。エジプトでは、ホスニ・ムバラク大統領が終身刑を言い渡され、最近行われた大統領選の決選投票では、イスラム原理主義組織ムスリム同胞団系のムハンマド・モルシが大統領に選ばれた。これで世俗主義だったエジプトにイスラム主義が入り込む可能性が出てきた。

 こうしたビッグイベントが続いている世界情勢だが、“変化”という言葉を聞いて思い出されるのは米国のバラク・オバマ大統領だ。2008年の大統領選キャンペーンで「Change」や「Yes We Can」というキャッチフレーズを使い、米国に“変化”をもたらすと約束した。

火曜日朝、テロリストらしき人が消される

伊吹太歩
ホワイトハウスのWebサイトにはにこやかな笑顔の写真も多い

 だが最も“変化”したのは大統領に就任してからのオバマ自身だと言える。人権派の弁護士としてブッシュ前政権のイラク戦争に反対し、裁判を行わないままテロ容疑者を拘束しているキューバ東部の「グアンタナモ収容所」を人権的な問題があるとして封鎖すると約束した。

 しかしながら今となっては、まるで“人殺し”大統領とも呼べるような行為を続けている。そんなオバマの実像を明らかにする記事を、米国の大手メディアでひんぱんに目にするようになった。

 米ニューヨーク タイムズによれば、オバマは毎週火曜日の朝、ホワイトハウスの危機管理室で殺人の作戦会議を行う(参照リンク)。そこでは、学校の卒業アルバムのように、テロリストの写真と簡単な説明が並べられた書類がオバマに提出される。そしてオバマは、彼らの殺害に承認を与えるのだ。

 関係者たちが「プロ野球カード」と揶揄するこの書類は、メディアによって「キル リスト(殺害リスト)」と呼ばれており、オバマの許可によって地球の裏側のアフガニスタンやパキスタンにいる「テロリストと思われる人々」が近々殺されることになる。

 「テロリストと思われる人々」と書いたわけは、現実に殺害宣告された人たちがテロリストであるかどうか、100%定かではないからだ。殺害する法的な根拠もない。逮捕して裁判ではっきりさせるまでもない、疑わしいから殺してしまえ、ということが現実に、ホワイトハウスで報告を受けるオバマによって毎週のように行われているのだ。

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