コラム
どう変わる? 大阪の鉄道網「なにわ筋線」:杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)
大阪府市統合本部が「グランドデザイン・大阪」を発表した。これは「大阪都」の将来を見据えた基本構想。もし実現すれば、関空と大阪市内を結ぶ鉄道網が大きく変わりそうだ。
大阪市営地下鉄は2003年度から単年度黒字となっており、2010年には累積欠損金を解消して約239億円の黒字となっている。この中には大阪市からの補助金約97億円と、敬老パス実施による市の補助金約53億円も含まれており、これを除いても約89億円の黒字だ。自治体が運営する地下鉄事業としてはかなり優秀である。
「グランドデザイン・大阪」は民間主導を目指しており、大阪市営地下鉄の民営化も検討されている。また、黒字を還元して料金を値下げし、人々の移動の活性化を図ろうというプランもある。試算によると、値下げによる減収は約60億円。「なにわ筋線」が開業して67億円の減収になれば、地下鉄の料金値下げ案は難しくなるだろう。
答申8合において「なにわ筋線」は、既存の鉄道インフラを再利用して、大阪の交通ネットワークを充実させようという意図があったのだろう。だから汐見橋駅で途切れた汐見橋線に注目した。私は「なにわ筋線」構想を知った時、汐見橋線が活性化されるかもしれない、と嬉しくなった。
しかし、関空アクセスの意味が強くなった「なにわ筋線」計画で、汐見橋線は置き去りにされてしまった。鉄道ファンならずとも新線開業には期待したいところだが、汐見橋線の行く末も心配である。
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