死んだら発動する“お別れサービス”は何年先まで保証する?:古田雄介の死とインターネット(3/3 ページ)
自分が死んだら、指定したアドレスにお別れメールを送ったり、自分のブログにメッセージを載せたりできる“お別れサービス”がある。それらがどのように運用されているか調べてみた。
起承転結の結を自分で付ける――ウィログ
ウィログは、ブログオーナー向けのお別れサービスで、2010年10月に始まった。ユーザーは連携するブログと生年月日や遺影、お別れメッセージなどを登録して、所定のガジェット(ブログパーツ)をブログに貼り付ける。生存中はウィログのロゴを表示するだけのガジェットだが、ユーザーが亡くなったとみなされると、あらかじめ設定しておいたメッセージが表示されるようになる。
生存確認は3段階。連携するブログのRSSフィードが一定期間配信されず、ウィログのユーザーページにもログインしていないと、登録したアドレスに生存確認メールが送られる仕組みだ。このメールに3回応答がないと死亡したとみなされる。
サービスは、ザクロ代表の藤下忠文氏のふとした疑問から生まれた。「ブログを書いている人が亡くなったらどうなるんだろうと思ったんです。事業者が積極的に消そうという動きにはならないだろうし、筆者が亡くなっても時代を超えて価値のあるブログも多い。なら、起承転結の結を付けるようなサービスがあればいいなと考えました」という。
まもなくプレスリリースを打ってウィログをスタートさせたが、プロモーションはそれきり。現在も口コミベースで広めるスタンスを続けており、登録ユーザーはおよそ130人に留まっている。「死を扱うサービスということで、収益性は特に考えず、あまりガツガツしたプロモーションはしないでおこうと考えました。もちろん使ってもらえるなら1000人でも1万人でもうれしいですが、特に数値目標を設けずに長く続けていきたいと思っています」(藤木氏)と、あえて受動的なスタンスで運営している。それでも、月1〜2人ペースで緩やかに登録件数は増えているそうだ。
推測される利用者層は20代後半から40代が中心。一般公開されているメッセージには深刻なものから軽いノリのものまで振り幅が広い。ユーザーからザクロへの要望や問い合わせはほとんどなく、それぞれのユーザーが思い思いに利用している様子だ。
サービスの保証期間について、ウィログを直接担当する、同社の市川亮氏は「サービス自身は弊社のサーバーの片隅を使ってやっているので、万一会社がつぶれてしまっても、仕組み的には私個人でも十分回していけます。もし本当に会社が解散して、誰も引き取らないとなったら、私が引き取って管理することも考えています」と話していた。
「会社が続く限り」がベースとなるのは、ラストメール……さらには各種ブログやSNSと共通している。そしてそこから先は、会社や担当スタッフの意志の強さに委ねられるのが現状だ。
個別の意欲に依る状況は今後も続くのか、それとも、次第に業界全体の枠組みが作られていくか。次回は、ユーザー死亡後のルール作りの最先端をいく、国際的なWebサービスの現状を調べてみたい。
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