市場は悪化したけど……米国の雇用統計は本当に“悪かった”のか?:ラッキーFPの“ついてる”はなし(2/2 ページ)
7月6日に発表された、米国の6月の雇用統計。事前予想より悪かったことで、市場は悪化する結果となった。しかし内容をよく見ると、決して悪くはないのだが……この背景にはどんなことがあるのだろうか。
予想数字が食い違う理由は?
そもそも、予想数字とは誰が作っているのでしょうか。それは、アナリストと呼ばれる人たちですが、彼らの多くは投資銀行、いわゆる証券会社に所属しています。
ここ3カ月、市場予想は大きく外れています。ある専門家の話では「今回の9万人増の数字も強過ぎるのでは」と懸念していました。むしろ、「もう少し低めの数字を出した方がいいのではないか」という指摘もある中で、直前になって予想数字を引き上げたのです。これは、どういうことなのでしょうか?
すごくうがった見方をすると、わざと高い予想数字を出して、現実の数字とのギャップ差を誇張することで、マーケットを下落させる狙いがあったとみることもできます。なぜならば、多くの投資銀行(証券会社)は、売りポジション(ショートポジション)を抱えたままでいるからです。まさに数字のマジックです。
ほかに考えられることは、QE3(FRBによる実施が予測されている量的金融緩和政策の第3弾)催促のためとの見方もあります。ここのところ発表される経済指標は、強くはないですが、決してすごく弱いというものでもありませんでした。雇用統計は、QE3に向けての大きな判断材料です。マーケット関係者は、どうしてもQE3を実施してほしいのでしょう。欧州や新興国の、世界的な利下げや量的緩和の動きから、米国も大きな追加緩和をやってほしいと願っているのでしょう。その思いが、予想数字に出てきたのでしょうか。
これらはまったくの憶測ですが、当たらずとも遠からじ(?)でしょうか。
雇用の改善がオバマ大統領再選のカギです。現政権は今、ウォール街と仲が悪いので、(予想数字が高かったのは)共和党がウォール街にすり寄ってのことなのか、ウォール街の反撃なのか、いろんな見方はできます。うがった見方をすればキリがなく、ここまでくれば飛躍しすぎているのかもしれません。いずれにしても、どれもこれも憶測の域ですが。
となると、予想数字も当てにはならず、数字は(多分)事実ですから、その解釈の仕方で、とらえ方は大きく異なります。前月よりも数字が良くなっても、市場マインドでは弱くなるのですから。
いやはや、分からないことだらけで、投資の世界は本当にフェアなのでしょうか。これからは、本当に物事を見抜く力、知っていると知らないとでは、大きく違ってきそうです。(原彰宏)
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