冗談みたいな通販カタログが成立する理由:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
ここに3冊の通販カタログがある。それぞれ競合他社のものだが、ページをめくって目を疑う。なんと、1ページ目から最後までまったく同じなのである。そんな冗談みたいな通販カタログが好評を博している。いったいなぜなのか?
ターゲットが明確に
それを象徴するようなことがあった。日本コロムビア所属アーティスト・舟木一夫さんのインタビュー記事を共通カタログに掲載したところ、同社のカタログはファンの方たちから資料請求が殺到して在庫切れ。だが、ビクターとEMIのカタログはいつも通りだったという。
「共通カタログ」が浮き彫りにしたのはこれだけではない。
「うちの顧客は7割が男性で平均年齢は70歳に近いのですが、これは3社に共通していました。ちょっと前は『できたら50代も』なんて言っていましたが、この1年でターゲットをシニアに絞った方がいいということが明確になりましたね」
といっても、いわゆる「アクティブシニア」ではない。共通カタログは音楽ソフトだけではなくさまざまな商品も紹介しているが、ウォーキングシューズなどはほとんど動かなかった。つまり、「インドアで、趣味にお金をかける」という通販にとって非常に優良な顧客層だということが分かってきた。それが確信に変わったのが真空管CDミニコンポだ。
「9万9000円という値段にもかかわらず300台も売れました。今のシニア層が若かったころは真空管ラジオでしたから懐かしいということもあるでしょうが、音や品質などへの強い“こだわり”があるお客さまが多いということを痛感しましたね」
音楽ビジネス、出版ビジネスなどは構造的不況に直面していると言われる。単体では厳しくても、このように「つながる」ということで、市場に新しい可能性が生まれているのだ。
「景気のいい時代だったら、競合3社が表紙だけ変えて、同じ中身のカタログを出すなんて発想は絶対になかっただろう」と山野井氏は語る。
この冗談みたいなカタログは、縮小する市場での戦い方を我々に教えてくれているのかもしれない。
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