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コラム

「長距離鉄道旅行」の終焉が、近づいてきた杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

夜行列車などの長距離列車が次々と姿を消している。いまやJR各社のメインターゲットは長距離旅行客ではなく、自社エリア完結型の短距離客。時代は変わり、JRも変わり、すでに鉄道を利用しての長距離旅行は“終わった”のかもしれない。

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国内航空とバスの規制緩和で鉄道の役割が明確に


ツアーバスの台頭により、鉄道を利用して長距離旅行をする人が減っている

 周遊きっぷを買わなくても、飛行機や高速バスで目的の地域へ行って、現地の鉄道のフリーきっぷを買えばいい。目的地までの移動で「鉄道にしばられたくない」という旅行者は多いだろう。そもそも「周遊きっぷ」による長距離鉄道利用は不便になってきた。夜行列車は廃止され、新幹線を使いたくても、利用機会の多い東海道新幹線は「5パーセント条項」(※)で価格メリットが小さい。

※周遊きっぷで東海道新幹線を利用する場合、「ゆきけん」「かえり券」が600km以下の場合は割引率が5%に下がってしまう。

 国内航空路は整備が進み、ツアーバスも台頭している。鉄道にこだわるにしても「新幹線用の往復割引きっぷのほうがトク」という地域もありそうだ。こうした時代の流れに「周遊きっぷ」の役目が終わりつつある。

 JRグループ各社にしてみれば「自社エリアの鉄道を利用してくれるなら、そこに到達するまでは鉄道でなくても構わない」という考えがあるだろう。もちろん、飛行機やバスより、鉄道の長距離きっぷを売りたいかもしれない。しかし、鉄道運賃は遠距離逓減制となっていて、長距離になるほど1kmあたりの単価が下がる。JR東日本の場合、1kmから3kmまでは140円で1kmあたり約140円〜46円。これが541kmから560kmの区分になると、1kmあたり約15円から約16円になる。短距離きっぷのほうが儲かる仕組みだ。

 きっぷの目的地が自社のエリアを超えれば、隣のJR会社と配分しなくてはいけない。だから長距離きっぷはうまみが少ない。それなら「自社エリアで完結する短距離きっぷや中距離きっぷに力を注ごう」となるわけだ。長距離きっぷに力を入れるつもりがなければ、長距離列車もいらない。寝台特急はなくなり、在来線列車の走行距離も分割されていく。

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