ユーロ圏の統合深化、次のステップは中央銀行の統合?:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
一向に出口が見えない、ユーロ圏の債務危機。ユーロ崩壊を避けるための次のステップとして考えられるのは、中央銀行の統合である。
EUは何か問題があるたびに強くなってくる
そうならないためには、さらに統合を進めるほかはない。その重要なステップが「銀行同盟」だと欧州情勢に詳しい筋が解説してくれた。銀行同盟とは簡単に言ってしまえばECB(欧州中央銀行)がユーロ圏の銀行に対する銀行(つまり中央銀行)になるということだ。従来はそれぞれの国の中央銀行とそれぞれの国の銀行という枠組みの上にECBがあった。この中央銀行の統合によって、それぞれの銀行にECBが直接資金を供与することが機動的にできるようになる。
すでに2011年、ECBはEU域内の銀行に対して3年という長期資金を低利で融資した。その総額は1兆ユーロだ。それらの資金の多くは、結局、EU加盟国国債を買い入れる資金になった。ECBがさらにこうした銀行の資産(国債など)を買い入れれば、銀行は国債を買う余裕が生まれるわけだ。ECBと民間の銀行の間に、各国の中央銀行が介在していれば、こうした動きを機動的に行うことは難しい。
ただそれでも、日銀の白川総裁が言うように、金融は「時間を稼ぐ」だけであるという事実は変わらない。時間を稼いでいる間に、各国が財政再建や成長戦略を実行してくれなければ、結局はまたどこかで債務危機が発生するだけだ。各国は、人口減少と高齢化、社会保障関係費用の膨張という、日本と共通する課題に悩んでいる。この構造的な問題には、手っ取り早い解決策はない。
英国ではオズボーン財務相が主導して財政再建を懸命に進めている。そのためもあって、このところ3四半期はマイナス成長となり、財務相に対する風当たりは強い。ただS&Pは英国債の格付けをAAAのまますえ置き、また見通しも安定しているとした。財政再建について政府に強い意思があると評価された結果だ。
欧州についてある財務省関係者が言った言葉が印象に残っている。「EUは何か問題があるたびに、強くなってくるあなどれない相手だ」。日本もそういう意味では問題があるたびに乗り越えてきた歴史を持つが、ここ20年ぐらいはめっきり解決力が落ちてきたように思うのは私だけではあるまい。
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