中国高速鉄道で、また事故が起きるかもしれない:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
2011年7月23日、中国浙江省温州市で起きた高速鉄道の転覆事故から1年が経過した。中国政府は市民の批判を恐れて報道を規制しているという。しかし、本当に恐れるべきは批判ではなく、事故の再発だ。
安全な中国鉄路を旅したい
日本の鉄道の安全技術は世界一だ。新幹線の輸出に際しても、日本の鉄道は安全というセールストークが行われている。しかし、その安全のほとんどは、尊い多数の犠牲者、その屍の上に築きあげられたといえる。日本の鉄道技術者はそれを決して忘れない。そして、彼らの改善への努力と結果を社会が認知し、鉄道への信頼につながっている。私たちが安心して電車に乗れる理由は、その根底に「鉄道は同じ過ちを犯さない」という信頼があるからだ。
中国の鉄道関係者は、日本が輸出した高速車両の「車両間に通路がある」理由を知っているのだろうか。特に理由も知らず「このほうが便利だな」くらいにしか思っていないかもしれない。
では、世界で常識となっている「線路を一定の間隔で区切り、その区間にはひとつの列車しか入れない」という大原則「閉塞区間」についてはどうか。あの事故を見る限り「面倒だからいらない」なんて考えていそうである。
事故を明らかにし、関係者、識者、社会が一体となって原因を追求し、対策を発明し、その実施も明らかにする。そんな当たり前のことができなければ、中国の高速鉄道事故はもう一度起きる。厳しい言い方だが、何度でも起きる。だから、どうか中国政府は考えを改めて、原因を追求し、改善策を実施し、それを公表してほしいのだ。
最初に書いたように、世界の鉄道ファンは中国の鉄道に魅力を感じている。
しかし、大好きな鉄道に殺されたいなんて、誰も思ってはいない。
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