コラム
“カワイイ”が自然を殺す、北海道で見た人間の残酷さ:相場英雄の時事日想(4/4 ページ)
「キタキツネ」といえば、北海道の野生動物のひとつとして有名だ。野生動物なので、本来、人間とはあまり遭遇しないものだが、筆者の相場氏はクルマを運転中に出会った。しかもその姿を見て、違和感を覚えたという。その理由は……。
全国各地の観光地で、ニホンザルやキツネ、あるいは鹿などに興味本位でエサを与える人は少なくない。だが道ばたに、無警戒で動物たちが現れることは、不自然極まりないことなのだ。この他にも、釧路に住むベテランのネイチャーガイドからもこんな話を聞いた。
「この辺りのキタキツネはクルマを恐れなくなった。観光客なら物珍しさからスピードを緩めるが、地元民は緩めたりしない。接触事故で死ぬ個体も増えている」
カワイイ。
キタキツネを目にした瞬間、ほとんどの人がそう感じるはずだ。クルマに寄ってくれば、なにかをあげたいという気持ちにもなるはず。だが、その行動自体が、野生動物をゆっくりと殺す行為であることを改めて感じてほしい。
細くなってしまった子狐の尻尾の写真を見つめていると、女将さんが地元紙のスクラップを見せてくださった(参照リンク)。旅の思い出にエサを上げる……これが野生動物と自然を殺すことになる。キモに銘じてほしい。
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