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インターネットを墓場に持ち込むと、望まないものだけ地上に戻ってくる?古田雄介の死とインターネット(1/3 ページ)

自分が死んだとき、遺族に直接的な迷惑をかけるものがネットに残る場合もある。どうすれば防げるのか、相続の対象としてのネットの資産と負債をみてみよう。

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著者プロフィール:古田雄介(ふるた・ゆうすけ)

1977年生まれのフリーランスライター。自ブログは「古田雄介のブログ」。


 日本で誰かが亡くなると、多くの場合は葬式の後に火葬場を通り、骨壺に入れられて、最終的にはお墓に納められる。そして、その人の資産や負債、意志などは、法律に則って停止したり誰かに引き継がれたり、ときには放置されたりする。そこには当然インターネットに残したコンテンツやアカウントも含まれるが、実際はどのように扱われることになるのだろうか。

 全国45支部で相続発生時の各種手続きを支援している相続手続支援センターでは、毎年2万件に及ぶ案件を代行・サポートしている。東日本支部を運営するシグマジャパン代表の半田貢氏によると、そうした案件のなかにネットサービスが絡むことも珍しくないとか。ただし、「課金タイプのサービスなら会費を止めて、ネットバンクの口座に残金が残っていたら指定口座に振り替えますが、無料サービスのアカウントは外から存在に気付くのが難しく、拾いきれません。特に捨てアドレスで登録したものはまったく分からないので、ノータッチになりますね」という。


相続手続支援センター。相談を受けたあと、故人の資産や負債から必要な手続きをリストアップするまでは無料で対応してくれる。その後、有料で相続に関する実務をサポートする

 故人が残した権利と義務はまとめて相続対象となる。遺族などは、貯金や土地を相続する権利があるし、負債などの何かしらの処理をすべき義務も負うことになる。ネットの世界でいえば、故人が残したブログなどの資産やアフィリエイト収入などが「権利」で、月額制の有料サービスの会員費などが「義務」になるわけだ。

 本来はそのどちらも相続するなり放棄するなり、きちんと処理した方が良さそうだが、現状は理想にほど遠いらしい。半田氏は「亡くなった人がインターネットで何をやっていたか、相続する遺族の人たちが知らない、あるいは把握しきれない場合がすごく多いんですよ」と語る。

 インターネットでの活動は実社会よりもはるかに単独行動が容易で、本人に隠す気がなくても、周囲にひもづけられるヒントを一切残さずに完結できてしまう場合が多い。このため、相続処理の現場ではネット関連に一切気付かれず、数カ月経ったころに会員制サ―ビスの支払い請求ハガキが届いて、遺族がはじめて「義務」に気付く例もあるとか。

 「数カ月支払いが滞れば契約を解除するという規約のサービスもありますが、解約手続きが行われるまで延々と未払い金が加算されるものもあります。このため、ふくれあがった未払い金が債権譲渡されるという問題も起きているようです」(半田氏)とのとこだ。

 一方で、契約の継続に一切の手続きがない無料サービスのアカウントやSNSに残ったコンテンツは宙に浮き、故人のネットバンク口座は凍結したり手つかずのままとなり、アフィリエイト報酬の行方も見えなくなる。ネット上の「権利」は発見するのが「義務」以上に難しいのだ。

 こうした現実を踏まえて、半田氏は「生前、ネット上で何をやっているかだけは家族に伝えておいたほうがいいでしょう。口頭で伝えておくのもいいですし、遺書にメモ書きを添えるだけでもいいと思います。契約しているサービスさえ分かれば、パスワードが分からなくても何かしらの手は打てますから。特に定期的に支払いが発生するサービスは知らせておかないと、思わぬ災難を呼びかねません」とアドバイスを送る。


ネットでの活動を知らせないまま他界すると、収入や預金、運営サイトなどを引き継ぐ「権利」が埋もれるばかりか、定額制サービスの支払いなどの「義務」を止められず、遺族を苦しめることになるかもしれない
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