悪者は誰? よく分からない社会になりつつある:佐々木俊尚×松井博 グローバル化と幸福の怪しい関係(3)(6/6 ページ)
社会がグローバル化していけば、どのような問題を引き起こすのか。垂直統合のビジネスが水平分業化したことで、富がどこに流れているのかよく分からない状況になっているのだ。
佐々木:やれることが、ほとんどないのではないでしょうか。今、先進国でまがりなりにもうまくいっているのはドイツくらいですよ。あとはフランスにしろ米国にしろ、ボロボロの状態ですから。
成長すればするほど国内の分断が進み、成長しなければ国自体が沈むというが今の状況。ある種のトレードオフになってしまっていますね。
「でも、仕方ないよね。それが現実だから……」と言えば、ものすごく叩かれる(笑)。ここ数年、叩かれまくっています。「ふざけるな」「無責任だ」といった感じで(苦笑)。
松井:いまのグローバル化の流れを止めることは本当に難しい。なぜならグローバル企業には頭のいい人間がたくさん集まっていて、しかも異常に働き者だから。こうした連中が本気でつくった仕組みを簡単に崩すことは難しいんですよ。しかもロビー活動などをえげつなくやっているので、庶民が対抗しようと思ってもやれることは限られてくるんですよね。
(つづく)
2人のプロフィール
佐々木俊尚(ささき・としなお)
作家・ジャーナリスト。
1961年兵庫県生まれ。愛知県立岡崎高校卒、早稲田大政経学部政治学科中退。毎日新聞社、月刊アスキー編集部を経て2003年に独立し、IT・メディア分野を中心に取材・執筆している。『「当事者」の時代』(光文社新書)『キュレーションの時代』(ちくま新書)『電子書籍の衝撃』(ディスカヴァー21)など著書多数。総務省情報通信審議会新事業創出戦略委員会委員、情報通信白書編集委員。
松井博(まつい・ひろし)
神奈川県出身。沖電気工業株式会社、アップルジャパン株式会社を経て、2002年に米国アップル本社の開発本部に移籍。iPodやマッキントッシュなどのハードウエア製品の品質保証部のシニアマネージャーとして勤務。2009年に同社退職。ブログ「まつひろのガレージライフ」が好評を博し、著書『僕がアップルで学んだこと』(アスキー新書)を出版。現在は2冊目の『私設帝国の時代』(仮題)を執筆中。twitterアカウントは「@Matsuhiro」
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