概算要求100兆円超、歳出削減できない国に未来はない:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
来年度予算の概算要求は復興費も含めると合計で100兆円を超え、過去最大になった。使う方を絞らなければいくら国民からカネを集めても財政再建などできるはずがない。
社会保障関連費をどう削るか
財政再建するというのなら歳出を抑えるのが本筋だ。今回、特に注目されるのが厚労省の要求額が一般会計分で約29兆6000億円に達していることだ。もちろんそのほとんどは社会保障関連費である。国債費などを除く国のいわゆる政策経費は72兆円ぐらいだから、ほぼ4割は社会保障関連費ということになる。
来年度でも1兆円を超える自然増があるが、社会保障関連費は毎年必ず増える。それは高齢者の数が増えるからだ。団塊の世代が70歳を超えはじめる5年後からは、急激にこの費用が膨らんでくるはずだ。それをいったいどうするのか。3党合意で決まっている国民会議の大テーマは、この増え続ける社会保障の費用を、どう削りこむのかという点にある。しかもそれは老人から大反発を食う覚悟でないと絞り込めない。
あえて言えば、保険診療の年齢制限も必要かもしれないのである。つまりある年齢になったら自費診療以外の治療は行わないということだ。「姥捨て山」と言われてもしかたがないこの政策を、実現しようと本気で考える政党があるとは思えない。一方で増税して一方でこれほどドラスチックな社会保障の給付削減を行えば、次の選挙ではまず間違いなく負ける。
もちろん老人医療費だけではない。生活保護や生活保護に伴う医療扶助も見直しの対象にしなければならない。最低賃金で働くより生活保護をもらった方が得という社会も、生活保護を受けている人を食い物にするビジネスが成り立つような社会もおかしい。
このような点を今のうちに修正しておかなければ、5年後ぐらいには消費税を10%引き上げて20%にするなんていう話が出ていても驚かない。電気代は高くなり、消費者の可処分所得は減り、雇用も減り続けるような社会にしないためにも、負担を求めるべきところには負担を求めなければならない。それこそ政治家の仕事だと思うが、果たして民主党にも自民党にもそれだけ肝の据わっていて現実感覚のある人はいるだろうか。
関連記事
- 誰が日本の政治に責任を持つのか
党内をまとめきれていない民主党。一方、野党第一党の自民党も独自政策を打ち出せる雰囲気はない。いったい何をやりたくて政治家になっているのか、一人一人の議員に問いただしたいと考える有権者も少なくないだろう。 - なぜ日本政府は外交下手になったのか
日米同盟によって大きなメリットを享受してきた日本。しかし、米ソ冷戦の終了や民主党政権の“政治主導”により、外交の軸が見出せなくなっている。 - ユーロ圏の統合深化、次のステップは中央銀行の統合?
一向に出口が見えない、ユーロ圏の債務危機。ユーロ崩壊を避けるための次のステップとして考えられるのは、中央銀行の統合である。 - 対立軸のなくなった政党政治はどこに向かうのか
増税法案を通すためにマニフェストを捨て、自民党などの野党の主張を受け入れた野田首相。与党と野党との違いがなくなりつつあるが、次の選挙では何が対立軸となるのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.