連載
ヤミ金被害は、本当に減っているのか?:新連載・「弱者」はなぜ救われないのか(4/4 ページ)
年収の3分の1以上の借り入れを制限する「総量規制」が、2010年6月に完全施行された。その結果、消費者金融などからお金を借りていた人たちはどのような立場に追い込まれたのか。
さらに、警察庁は2010年に自殺した3万1690人の自殺理由を公表しているが、改正貸金業法の段階的施行が始まった2007年から2010年にかけて、多重債務を理由に自殺した者は1973人から1306人へと667人(33.8%)も減ったとして、これらを改正貸金業法の効果と結論づけている。しかしながら、警察庁は敢えて積極的に言わないものの、同期間に生活苦を理由にした自殺は1137人から1649人へと512人(45.0%)増加、また親子関係や夫婦関係の不和による自殺はそれぞれ、409人から575人、981人から1207人へと、合わせて392人も増えており、アピールする「改正貸金業法の効果」による減少分を相殺する増加となっている。改正貸金業法の影響でお金が借りられなくなり、生活苦や家庭不和に陥り自殺に至ってしまった人は、この575人や1207人にどの程度含まれているのであろうか。
そもそも、自殺してしまった者の動機を後から調べ、国が統計データとしてとりまとめていること自体にどれほどの道理と意義があるのか大いに疑問があるが、仮にその調査統計に意味があるとしても、結局のところ、分類のさじ加減一つで各々増減してしまうような程度のものなのではないかとの疑念が晴らせないところである。
(つづく)
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