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コラム

「のんびりゆったり」はローカル鉄道を潰す杉山淳一の時事日想(2/6 ページ)

大都市に住む人にとってローカル線といえば、「都会の忙しさを離れてのんびり」というイメージだろう。それは「旅」の発想であって「生活」の発想ではない。ローカル鉄道の再生には「生活路線」としてどうあるべきかを考えなくてはいけない。

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最長距離鈍行は山手線より速く走る

 ローカル鉄道はのんびり走る。これは誤解だ。忙しい都会に住む人々の「時間に縛られない暮らし」への憧れと、都会のスピード感に対する自負が生み出した、誤ったイメージである。この誤解のままローカル鉄道を考えてはいけない。ローカル線こそ、都会の電車より速く走らなくてはいけない。都市に住む役人や、運輸行政に意見する立場の識者は、この点をきちんと認識する必要がある。

 鉄道ファンは列車の速度を比較する指標として「表定速度」を参考にする。市販の時刻表などを見て、「A駅を発車してからB駅に到着するまでの時間」と、その区間の「営業距離」を元に計算する。途中駅の停車時間なども含めた速度である。クルマなどでは出発地から目的地までの所要時間と距離で「平均速度」を求めるが、鉄道の場合は鉄道会社が示す「営業キロ」を元に計算する。営業キロは実際の距離とは微妙に異なるため「時刻表上の速度」として「表定速度」を使うわけだ。

 さて、日本最長距離鈍行「滝川発釧路行」の「表定速度」は、時速約38キロメートルである。これは速いか、遅いか。ちなみに山手線は1周34.5キロルートルを約1時間で走る。山手線の表定速度は時速約34キロメートルなので、最長距離鈍行は山手線より速いといえる。東海道新幹線の表定速度、時速221キロメートルにはもちろん敵わないが、最長距離鈍行だってけっして「のんびり」ではない。


滝川駅で出発を待つ日本最長鈍行。ホームにも「日本最長」のポスターがある

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