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尖閣諸島問題の行方は? 日本外交の構想力が試される藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

尖閣諸島の国有化をめぐり、緊張が高まる日中関係。10年に一度の中国指導部の交代を控え、その対立は終結する気配はない。

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日本外交の構想力が試される

 そこまで考えている以上、尖閣で日本に譲歩することは考えにくい。いかに米国が「尖閣は日米安保条約に基づいて防衛する範囲に入っている」と明言しても、ここで日本に譲歩する形になれば、南シナ海でフィリピンやベトナムを「脅しにくく」なるからだ。

 ということは日本も、領土問題は存在しないという建前ばかりに頼ってはいられないということでもある。すぐに武力衝突ということもあるまいが、少なくとも、領土問題でロシア、韓国、中国の3正面作戦を展開するのは愚かと言えるかもしれない。竹島については韓国側が実効支配しているし、実際に軍が警備していることこともあって、日本側から動くことは難しいが、ロシアとの北方領土問題は、エネルギーや経済協力との合わせ技で何とか解決の糸口を見つけることが重要だと思う。

 さらに中国に対する交渉力という意味では、ベトナムやミャンマー、フィリピンとの関係を強化することが重要だ。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)などはそのいい手段と考える。この交渉国には中国は入っていないが、ベトナム、マレーシア、シンガポールが入っている。さらにインドとの関係もいっそう重要になるだろう。

 日本の経済力は着実に低下し、中国の方は減速するといっても日本よりははるかに速いスピードで成長する。現在でも購買力平価換算だと日本の2倍程度の規模になっていることを考えれば、日本に追いつくのもそんなに先のことではない。そうした中で、中国に対して一定の力を保つためには、周辺国との関係をより強化する(もちろん日米関係がそのバックになければならない)ことが必要だ。

 その意味では、日本外交の構想力が試される時代になっているのだと思う。ただ政権のやり取りに血道を上げているように見える現在の政治にそれが期待できるかどうか。心許ないと思うのは私だけではあるまい。

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