フォークランド紛争に学ぶ、領土問題:新連載・リアリズムと防衛を学ぶ(3/3 ページ)
竹島や尖閣諸島の領有権問題で揺れる日本。しかし、領有権問題は世界の様々な地域で発生しています。1982年に起こったフォークランド諸島(マルビナス諸島)で、英国とアルゼンチンが領有権をめぐり戦争するに至った経緯を振り返ります。
正しさは、手段に過ぎない
プロイセン王国※の宰相ビスマルクは、悪どい外交家でした。時に、相手国の王様から送られてた電報を改ざんしたこともありました。たくみに挑発し、自国に戦争を仕掛けるように相手を誘導したこともありました。
相手を悪くみせ、自国を善に見せ、争いを有利に運んだのです。しかし、自らそれにとらわれることはしませんでした。
王が「戦争をしかけてきたのはオーストリアであるからして、オーストリアは罰せられてしかるべきだ」と述べた時、ビスマルクは「オーストリアが我われに敵対するよう仕向けたのは正しいことであり、また彼らが我われの要求に反対したのも当然のことであります」と答えている。(テイラー『戦争はなぜ起こるか』39ページより)
自国が正しい、相手が悪いという信念は、多くの場合、打ち手を過度に制限してしまい、自らを悪手に追い込みがちなものです。正しさは演出すべきもので、自ら信じすぎるのは考えものです。この種の冷めた感覚をなくした時、大衆は極端に走り、指導者は思わぬ悪手に出るものです。
このビスマルクですら、最後には大衆の情熱を制御できず、次世代に禍根を残す結果になっています。
さいは投げられた
30年前のアルゼンチンでは、国民の不満から目をそらし、不安定な自分の政権に求心力をもたらすため、歴史的ないさかいが掘り起こされました。
国際紛争において、世論はしばしば無力であり、時にはその頑迷さが、うかつなリーダーを誘惑します。リーダーが人々の情熱に訴え、安易に大見得をきった時、拍手喝采の中で破局が約束されました。
「心配することはないよ。負けるはずは無いのだからな」と、大統領は外務当局に語ったそうです。
戦争が始まったのはその1カ月後。敗戦の責任をとって大統領が退陣したのは、3カ月後のことでした。
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