企業の採用難は、自らの女性差別が一因
学生が就職難と言い、企業も採用難だと言うのは、なぜか。それは優秀な女子学生をさまざまな理由をつけて、採用していないことに原因があるのではないだろうか。
著者プロフィール:川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ」
企業の人事部で新卒採用に携わっている人にうかがうと、「男子学生のレベルが低い。男子学生の採用に苦労している」という声が、とにかく多い。シューカツ支援でお勉強するような自己分析とか、業界研究とか、キャリアデザインといったことができていないのがその理由ではなく、元気がない、覇気がない、意欲がないといったことを異口同音に指摘する。会社によっては、「何も考えずに採用していたら、全員女子学生になってしまうかもしれない」というくらいだ。
それでも、平成23年度「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」によれば、男子の内定率が94.5%、女子が92.6%で、男子のほうがやや上回っているし、今年7月にリクルートが発表した「学生の就職内定状況」を見ても、男子51.7%、女子43.5%となっており、他の同種の調査でも女子学生が就職で優位となっている数字は見当たらない。
これは、企業が依然として男子の採用にこだわっているためである。「自社の業務は女子には難しい」とか、「男性ばかりの職場に女性を入れるのが不安だ」とか、「若い女性をマネジメントしたことのない管理職ばかりなので育てられない」とかいった理由で女子を採用せず、無理矢理にでも男子学生を採用する会社が多いからだ。
雇用機会均等法によって、あからさまな採用差別は確かに減った。しかしそれは、求人票の公開や募集広告など、最初の情報公開に限った話で、選考というオープンにならない段階においてはまだまだ女性差別は残っている。
特に、製造業や建設業、金融、インフラ系といった古い体質の残る業界では上に書いたような理由で女子の採用を絞り込んでいるし、それらの業界を主たる顧客とする企業も、そのような体質の企業を相手にするのは女性では難しいと考えて男子学生を採用する。「相手が女性を軽んじるから、本当は女性を採用したいのだができない」と言う。女性に開放された職種が増えて、よく目にするようにもなったが、実際にオフィスを見れば、総務や経理の一部に女性がいるだけで、ほかは男ばかりという会社はまだまだ非常に多いのである。
就職難と言われるが、企業も採用難だとこぼしている。であれば、「全員女子学生になってしまうかもしれない」などと言わずに採用したらいいと思う。女子学生に話を聞いていると、「結婚しても続けたい」「力仕事もいとわない」という女子学生は多いし、厳しい職場環境に対する耐性も女性の方があるように見える。
今どき、女性には難しいという仕事はあるのだろうかと思うし、「男性ばかりの職場だから」「女性のマネジメントをしたことがないから」というのは変化したくないというだけのことだ。また、女子学生に男子を評価させてみたら、企業が口にするのと似たようなことを言うのも事実である。(川口雅裕)
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