“地獄の一丁目”にいるのは誰か――ヤミ金が増えている:「弱者」はなぜ救われないのか(5)(5/5 ページ)
改正貸金業法の施行後、ヤミ金が増えているという。ヤミ金はどういった“客”を狙って、お金を貸しているのだろうか。複数の関係者に取材したところ、ある層の人物がターゲットになっていることが分かった。
「現金が欲しい客にクレジットカードで商品を買わせ、購入代金の一部を返金する『カード現金化』で違法な高金利の貸し付けをしたとして、出資法違反罪などに問われた(東京都内)板橋区の飲食店経営、H(記事では実名)被告=42=に地裁立川支部は25日、懲役3年、執行猶予5年、罰金2000万円の判決を言い渡した。深見玲子裁判官は判決理由で『高金利を承知で借金をせざるを得ない経済的弱者を、さらなる困難に陥れた悪質な犯行』と指摘。(略)判決によるとH被告は昨年3月?今年1月、現金化を申し込んだ客4人に、ネックレスなどの商品を購入させ、代金の一部を『キャッシャバック金』として返金。カードの決済代行会社からの立て替え払いを自分の銀行口座で受け取り、差額の計約70万円を違法な利息として得た」(毎日新聞)
H被告は用意周到にこれら犯行を行ったのか。
「彼は飲食業を営むかたわら、いくつものヤミ金を経営していた。特にこの『キャッシュバック型』については悪いという認識もなく合法的と思っていたらしく、逮捕後『捕まるとは思っていなかった』と供述したという」(警視庁担当記者)。
A子やB子のような借りるほうも、H被告のような貸すほうも、最初は、そんなに深刻に考えもせず、気軽にヤミ金に手をだしている。その「気軽さ」が恐い。
いずれにしても、まさに小口で生活費に困ったごくごく当たり前の主婦や庶民が地獄の一丁目の入り口にたたずんでいるのは間違いない。
(つづく)
関連記事
- ヤミ金被害は、本当に減っているのか?
年収の3分の1以上の借り入れを制限する「総量規制」が、2010年6月に完全施行された。その結果、消費者金融などからお金を借りていた人たちはどのような立場に追い込まれたのか。 - 借金大国日本で“踏み倒す人”が急増している理由
国民年金、給食費、授業料、治療費……今、公的な支払いを踏み倒す人が増えている。この背景には、いったいどんな「裏」があるのだろうか? - 『闇金ウシジマくん』の関係者が語る、“優しい闇金”の真相(前編)
“優しい闇金融”と呼ばれる違法ビジネスを営む輩が、水面下でうごめいているのをご存じだろうか。その実態はベールに包まれていたが、ノンフィクションライターの窪田順生氏が彼らの実態を明らかにした。 - あなたのそばにいる“優しいヤミ金融”……その実態は?
かつて高金利で厳しい取り立てを行い、社会問題にもなったヤミ金融。しかし今では、“優しいヤミ金融”と呼ばれる非合法な業者がはびこっているというが、その実態は不透明だ。そこで貸金業に詳しい、東京情報大学の堂下浩准教授に話を聞いた。 - 改正貸金業法から考える、日本人とお金の関係
2年前に完全施行された改正貸金業法によって、貸し出しの上限金利は20%となり、個人は年収の3分の1までしか借りられなくなった。ある意味おせっかいとも言える規制ができた背景には、日本人のお金に対する考え方があるからかもしれない。 - あなたもお金が借りられなくなる? 法律が招いた“優しいヤミ金”
あなたは「優しいヤミ金融」という言葉をご存じだろうか? かつてのヤミ金といえば「取り立てが厳しい」「金利が高い」といったイメージがあるが、この優しいヤミ金とは「取り立ては厳しくない」「金利は高くないが、違法」といった手口だという。 - 消費者金融を襲う3つの難題
消費者金融が試練に立たされている。返還請求で巨額の赤字を計上、新貸金業法で事業の縮小が予想される。淘汰か、再編か、業界の悩みが続く。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.