「プロゲーマーという職業に希望を」――格闘ゲーマー・梅原大吾氏の挑戦(2/5 ページ)
対戦型格闘ゲームの世界的なプレイヤーとして知られる梅原大吾氏。そのカリスマ性に注目したゲーム周辺機器メーカーのマッドキャッツが2010年にスポンサーとなった。マッドキャッツはプロゲーマーに何を期待しているのか、また梅原氏はプロゲーマーとしてどのような思いで活動しているのかを尋ねた。
プロゲーマーに期待する役割は
――プロゲーマーになってからどのような活動をされたのですか。
梅原 マッドキャッツがスポンサーになってくれてプロ宣言をしたのですが、初めのうちは海外の大会に行くくらいしか活動内容はありませんでした。ただ、今年でもう3年目になるのですが、トークイベントに呼ばれたり、本(『勝ち続ける意志力』)を出版したり、新聞のインタビューに答えたりと、ゲーム以外の活動も大分増えてきましたね。
今年の一番大きな仕事は、格闘ゲームではないのですが、4人対4人でやる戦争ゲーム、FPSみたいなジャンルのゲームの開発に協力するということです。スクウェア・エニックスの『ガンスリンガー ストラトス』というアーケードゲームで、2カ月前にリリースされました。
――具体的にどういう部分に関わったのですか。
梅原 ほとんどでき上がった状態からプロモーションに参加したので、細かいバランス調整や、どうすればもう少し面白くなるかという最後の仕上げの部分ですね。あとはオフィシャルサポーターということで、何かあるごとにゲームを宣伝しています。
――お話を聞いていると、マッドキャッツの宣伝をするというよりは、格闘ゲームの認知を広げる活動の方が多いように感じます。
梅原 マッドキャッツにスポンサーになっていただいているので、もちろんマッドキャッツのレバーを売るための活動がメインです。
しかし、マッドキャッツにとって不利益にならないようなことであれば基本的に何をしてもいいという契約なので、格闘ゲーム業界が盛り上がればマッドキャッツにとってもプラスですし、アーケードゲームが盛り上がればメーカーも新しい格闘ゲームを作ろうという風になるので、幅広く活動していますね。
――基本的なところですが、マッドキャッツの売り上げ規模と推移、現状の課題について教えていただけますか。
マーク 売り上げは1億2000万ドル(約93億円)で、ここ数年ほとんど変わっていません。マーケットによって結構浮き沈みはあるのですが、全体としては相殺されています。
私はプレイステーションやXboxといったゲーム機をベースに仕事をしているのですが、発売から何年も経ってくると、ユーザーは次世代ゲーム機に期待するようになるんですね。それに切り替えるのは、企業としてすごく体力がいるので、それが課題になっています。
――近年、(あまり周辺機器を使わない)スマートフォンのゲームが増えてきていますが、ゲーム周辺機器メーカーとしては難しい状況だと思います。
マーク モバイルユーザーが増えることによって、ソーシャルゲームなどを遊ぶ人口が増えていくということは、例えば格闘ゲームなど、私たちが得意としているハードコアゲームに入っていく人たちも増えていくということで、基本的に非常にポジティブに考えています。だから、そのためにマーケティング調査を行っています。
ソーシャルゲームを作っているメーカーは最初は小さいところだったのですが、どんどん大手メーカーが作るようになっています。その大手メーカーというのは当然、ハードコアゲームも作っているので、その間でのシフトが必ず起こってきます。
――売り上げは横ばいということですが、プロゲーマーを活用したプロモーションを2年間行ってきて、どのように振り返っていますか。
マーク 私自身がゲーミングコミュニティから来た人間なので、プロゲーマーと一緒の利害のもとに働くということは非常にうれしいです。そうすることでマッドキャッツだけでなく、プロゲーマーにとっても先ほど梅原が言ったように、スクウェア・エニックスとの仕事ができたりと、どんどん活性化されていくのはすばらしいことだと思っています。
――プロゲーマーに関して、今後はどのような活動をお考えですか。
マーク 格闘ゲームだけでなく、ゲーム全体に対してのスポンサーを続けていきます。自社だけではなくてゲーム業界、それからプロゲーマーといった全体の利益というか、そういったところを活性化させるために何ができるか。今後、そのためにスポンサーを続けていくのが楽しみです。
――梅原さんはプロゲーマーとしての役割をどのように認識していて、今後どういったことをやっていきたいといったことはありますか。
梅原 自分が第1号になって、その後に10人くらいプロゲーマーが出始めたのですが、その先頭というか代表として「イメージアップをしたい」というのが一番大きいです。まずプロゲーマーという存在を知ってもらって、「ああプロゲーマーって得体が知れないけど、意外といろんな活動しているし、しっかりした考えを持っているんじゃないか」と思ってもらえればいいと思います。
今後についてもそうですね。プロゲーマーといってもすごく歴史が浅いので、何をもってプロなのかというのかがまだはっきりとは決まっていないんですよ。
なので例えば、今でいうと本を出版したとか、一般メディアのインタビューに答えるとか、ゲーム開発に関わるとか、そういう風に幅をどんどん広げていって、後から続く人たちが「ああプロゲーマーってこういうこともできるんだ。自分はゲームと文章を書くのが得意だから、じゃあゲームをプレイしながら文章の仕事もしよう」とか、いろんな人たちがプロゲーマーという職業に希望を持てるようになればいいかなと。今後の課題というか目標はそこですね。
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