私たちは世代間の不公平さをどう解決していくべきか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
人口の多い団塊の世代が高齢者となっていくことで、健康保険などの仕組みが崩壊しつつある。若い世代が今までのようなメリットを享受するのが難しくなっている中、世代間の不公平さをどう解決していくべきなのだろうか。
私たちは世代間の不公平さをどう解決していくべきか
問題はこの負担だ。37兆円をいったい誰が払っているのか。厚労省の資料によると、公費負担が14兆円(国が約3分の2、残りが地方)、保険料で払われているのが18兆円(うち10兆円は被保険者)、患者負担が5兆円弱だ。
保険料での支払いはすでに窮屈になっている。すでに健保組合の8割は赤字になり、解散も増えている。それは当然だ。健康保険組合の基本は、互助会だから、保険料を払う現役の人が減り、保険を使う人が増えてくれば、財政は悪化する。ここを直すために、保険料を引き上げるか、健保組合の支払いを減らすしかない。
若い世代にとっては保険料を今以上に引き上げられるのはたまるまい。昔のように年々収入が増えるというわけではない。むしろ収入は伸びないと思った方がいい時代だ。消費税も引き上げられる中で、健康保険の保険料までもが引き上げられるというのはたまらない。そうすると、健保組合の支払いを減らすということも考えなければなるまい。
ターゲットの1つは薬剤費(日本は諸外国に比べて薬剤費の割合が高い。37兆円の中の6兆円ほどである)。ジェネリック(いわゆる後発医薬品)の使用を勧められるのはその一環だ。もう1つは高齢者である。前にも書いたことがあると思うが、高齢者を無制限に公的保険で診療しているのは日本ぐらいのものだという。高齢者の保険診療制限というのは「カネで命を買うのか」という倫理的な問題があるため、そう簡単に結論を出せる話ではない。
しかしこの問題にある程度の決断をしないかぎり、世代間闘争にも日本の財政問題にも決着をつけることはできない。エコノミスト誌は、ベビーブーマーがもたらした債務というツケを解消する手段は、成長促進、緊縮財政、インフレの3つがあるとする。しかし今後の医療費をはじめとする社会保障関連費用の増加を考えると、インフレは解決手段とは言えない。インフレはむしろ医療費をさらに増やす方向に働くからだ。
世代間闘争の最先端を行く日本。私たちがこれをどう解決していくか、世界は注視している。ただ民主党も自民党も票を気にするかぎり、団塊の世代を敵に回すことになる解決策を提示することはできない。日本の政治の手詰まり感の根源はこの辺りにあるのかもしれない。
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