ブラックマンデーから25年、我々は誤った教訓を引き出してしまったのか?:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
1987年10月19日、ニューヨーク証券取引所でダウ平均は508ポイントも下落した。それから25年を機に英エコノミスト誌最新号に載った記事によると、この大暴落から誤った教訓を引き出したことが、世界経済を苦境に陥れた最大の原因であるという。
エコノミスト誌の記事では、3つの間違った教訓が指摘されている。第一に、株式市場が大幅に下落すると中央銀行が出動するという「前例」が生まれたこと(しかし株価が継続的に上昇しているときは、バブルであるにもかかわらず何もしない)。第二は、もともと金融機関の保護というのは預金者を保護するためのものであったにもかかわらず、その範囲が拡大されAIGのような保険会社まで救済したこと。第三は、金融取引の中で自分たちの取引に保険をかけるという「商品」が生まれたが、現実に価格が下落し始めると誰も買わないという状況が生まれるということに気がつかなかったこと。
この指摘が正しいかどうかは別にして、その時点で可能な限りの将来を予見して正しい選択をしたつもりでも、結果的にはそれが間違った結果をもたらす可能性があるということは明白だと思う。中国で人口爆発を防ぐための一人っ子政策が、近い将来の成長力を阻害することは火を見るよりも明らかだ。しかし一人っ子政策を採用したときには、ほとんどの人が賛成あるいは納得したはずだ。
現在、先進国の中央銀行は大金融緩和をしている。2008年のショックからなかなか立ち直れないからだ。しかし金融緩和、財政出動という処方箋で本当にいいのかどうか。日本もバブルが弾けて以来、基本的にその政策を採ってきたけれども、実際に経済が回復軌道に乗ったと実感できたことはない。デフレから脱却できていないからだ。
いくらカネを注ぎ込んでも景気がよくならないとすれば、その結果は悪性インフレになるかもしれない。そうなれば年金世代は大打撃を被るだろう。大幅なインフレは政府の借金を一気に軽くすることにつながるとしても、その過程では金融をはじめ経済は大打撃を被ると思う。
ようやく世界経済が落ち着いたとき、このリーマンショックの教訓は何だったのかについて、改めて議論があるのだろうか。そのときには各国の中央銀行や、国際機関のエコノミストたちはどう総括するのか。ちょっと意地悪に期待したいと考える。
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