鉄道、映画、お金の関係を考える――『旅の贈りもの』制作者インタビュー(後編):杉山淳一の時事日想(8/8 ページ)
鉄道会社でもロケーションサービスの取り組みが始まっている。映画やドラマなどの制作に協力することで広報に役立てようという考えだが、そこに問題はないのか。映画プロデューサーの竹山昌利氏に話を聞いた。
杉山:ビジネスとしてやるなら、顧客の要望も聞いてくれないと。安全が大事という理由は分かるけれど、もう少し映画製作を理解してほしい。お金を取るなら、それなりに映画をとる環境を整えてほしい。しかも映画を見て、ロケ地に興味を持った人が来てくれる。列車に乗ってくれるわけですね。きっぷも売れると。
竹山:それをJR西日本は分かっているんですね。最近は東京の大手私鉄も使わせてくれるようになったけど、ある会社は料金が高くて、映画では使えるけれどテレビでは使えない。別の会社は使える駅や列車が限定されている。
杉山:一律に料金を決めるのではなく、作品ごとに料金に柔軟性を持たせてほしいということですね。作品性と宣伝価値と、そんな相談に応じてほしいなと。
竹山:予算が少ないと、鉄道ロケをやりたくてもやれない制作会社も出てくるわけです。2時間の鉄道サスペンスドラマは、鉄道ロケをやらざるを得ない。それなのに「物語の鍵になる駅が使えない」と嘆いている制作者もいます。
杉山:そういえば、ビートたけし主演のドラマ『点と線』の場合、「昭和の東京駅」のシーンは大阪にセットを作ったんですってね。
竹山:JR西日本の車両基地です。我々のEF58もそこで撮りました。そのくらいJR西日本は協力的なんですよ。
杉山:JR西日本はいい会社だなと。
竹山:いいというか、前向きですね。フィルムコミッションやロケーションサービスのあり方をちゃんと勉強していると思います。
杉山:撮影に協力するからタダで宣伝して、という「バーター」ではなく、お互いのメリットを付きあわせたビジネスにする。そうすると、鉄道が登場する映画はもっとたくさんできて、良い映像になって、鉄道で旅する人も増える。そんな関係になるといいですね。
10月27日公開の『旅の贈りもの 明日へ』のもうひとつのテーマは「60歳が恋をしたっていいじゃないか」と竹山氏。人生の転機を迎えた時、誰に会いたいか。男性ならそこに「初恋の人」がいるはず。その恋を晩年に復活できたらいいな……という期待。果たして、その想いは叶うだろうか。そこに懐かしい電車が絡んでくる。多くの鉄道好き男性の共感を得る物語となっている。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
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