暮らしの中から生まれる創造、あるタイポグラフィデザイナーの場合:郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)
ハウスインダストリーズの仕事には生きかたの理想形がある。日々の暮らしの中で仕事が生まれ、創造が生まれる。それは人の本来の姿でもある。
著者プロフィール:郷 好文
マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ「cotoba」
タイポグラフィ(活字/フォントをつかった印刷表現)のデザイン会社ハウスインダストリーズは、1993年にアンディ・クルーズさんとリッチー・ロートさんの2人が始めた。それはちょうどアナログからデジタルへの転換期。アナログ文化の温かさ、デジタルワールドの展開力。彼らはその両方を大切にしてきた。
ハウスインダストリーズの3つのプロジェクト
北米から欧州そしてアジアへ、活動を広げてきたハウスインダストリーズは、2012年10月中旬から11月にかけて日本で3つのプロジェクトを進めた。
まず新宿伊勢丹のウィンドウ展示『バカラ、そのクリエーションの軌跡』では、“クリスタルの魔法”バカラにインスピレーションを受けた11組のデザイナーの言葉をフォントデザインにした(10月17日〜11月6日展示)。
表参道の無印良品の店『Found MUJI』開店1周年を記念して、エコバッグに彼らのロゴをスクリーン印刷をするワークショップやアンディのトークショーが開かれた(Cafe & Meal MUJI南青山)。
さらに長崎の名品、波佐見焼き陶磁器ブランド「HASAMI」のとのコラボで『Morning Collection』を発表した(伊勢丹新宿店他で発売)。
私が興味をもったのは、自分がギャラリーを運営しているからだろう。活版印刷や手づくりのイベントを開いてきたこともある。ギャラリーのあるビルは印刷会社で、タイポグラフィは割と身近な存在である。
だが彼らのタイポグラフィから感銘を受けるのは業界人やデザイナーばかりではない。普通の消費者が「いいね!」という。フォントで遊びたくなる。書き始める。暮らしが豊かになる。それは彼らの創造が平面にとどまらず、暮らしのあちらこちらに入り込んでくるからだ。
彼らの活動からその秘密を解いていこう。
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