何が必要なのか? ストーカー殺人を繰り返さないために:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
神奈川県逗子市の女性が、元交際相手につきまとわれて、刺殺されてしまった。ストーカー規正法が施行されてからもう何年も経つが、なぜ同じような悲劇が繰り返されるのだろうか。
これ以上被害者を増やさないために
少年院を含めて5つの矯正施設の出入所を繰り返した後、別れ話を切り出した恋人の自宅に忍び込んで、包丁でメッタ刺しにした男がいる。ムショへ面会に行ったら、彼はイラつきながらこう言っていた。
「ムショでは食器落としても教官の許可がないと拾えない。そんなバカみたいなルールが更生になんか意味あるんでしょうかね」
意味なんてほとんどない。多くの受刑者は自由を奪われて怒りが増すだけだ。
ひとくちに「犯罪者」と言っても、こういう者と泥棒や詐欺師とはまったく種類が違う。にもかかわらず、一律で同じように裁き、同じ刑務所に入れて、同じように整列して歩かせて、同じ工場で働かせる、というのが日本の矯正教育だ。
ストーカーやらにはそれじゃ逆効果でしょ、そういう火に油を注ぐようなことをしてシャバに放り出して、本当にいいんですか、犯罪者によって刑務所を分けたりして、対応もカスタマイズすべきじゃないんですか――。
なんてことを『週刊新潮』で「刑務所が犯罪再生工場になっている」というタイトルで主張をしたら、カチンときたのか、「監禁男」が服役していた千葉刑務所から、「更生の妨げになる」と面会禁止となった。
こっちは法律にのっとってやってるんだから文句あるかというわけだ。小堤容疑者にベラベラと三好さんの住所を告げた逗子署の弁明もこれに似る。
こういう事件の時、新聞の論説委員なんかは「警察に猛省を促したい」とか締めくくるのがお約束だが、今回ばかりはそういう建前みたいな話はいい。
桶川ストーカー事件で猪野詩織さんが殺されてから、いったい何人が同じような目にあったのか。猛省とか、検証はもう十分やっただろうに。これ以上被害者を増やさないためにも、早急に法改正をし、小堤容疑者のような男を「犯罪者」ではなく「ストーカー」として扱い、専門の対処をすべきではないか。
三好梨絵さんのご冥福を心からお祈りします。
関連記事
- 角田美代子容疑者に“戸籍ロンダリング”を伝授したのは誰なのか
「尼崎連続変死事件」で主犯格とされている角田美代子容疑者。養子縁組を悪用することで警察の介入を妨げたと報道されているが、その手口は暴力団や闇ビジネス関係者が良く使っているもの。誰かが角田容疑者にこの支配と暴力のスキームを伝授したはずである。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。 - 借金大国日本で“踏み倒す人”が急増している理由
国民年金、給食費、授業料、治療費……今、公的な支払いを踏み倒す人が増えている。この背景には、いったいどんな「裏」があるのだろうか? - 天才チンパンジー“パンくん”の女性襲撃は予見されていた?
『天才!志村どうぶつ園』などに出演している天才チンパンジー“パンくん”が、20歳の女性にかみつき、全治2週間のケガを負わせた。テレビ出演には専門家から何度となく警告が発せられていたが、それを無視し続けたことが今回の事故につながったのかもしれない。 - 受信料徴収や新聞勧誘の裏ワザ、“てんぷら”って何?
新聞勧誘やNHK受信料徴収の現場では、しばしばインチキが横行しているという筆者。そのインチキの1つに“てんぷら”というものがあるという。 - 森口尚史さんのウソで露呈した、マスコミの“弱点”とは?
iPS細胞をめぐって、読売新聞が森口尚史さんにダマされたなんだという騒動がようやく落ち着いてきた。それにしても大手マスコミがなぜ相次いでダマされたのか。その背景には、マスコミが抱える構造的な問題があるからだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.