JR東日本は「鉄道業」……不正解ではないが、100点ではない:儲かっている企業にはワケがある(4/4 ページ)
JR東日本って何屋さん? と聞かれれば、多くの人は「鉄道業」「運輸業」と答えるでしょう。もちろん間違いではありませんが、「100点」をあげることはできません。なぜなら……。
ショッピングセンターとの違いは、ホテルが2つ稼働していること。丸の内駅舎には東京ステーションホテルがリニューアルし、駅北側でも2007年にホテルメトロポリタン丸の内が開業しました(運営はいずれも100%子会社の日本ホテル株式会社が担当)。後者はややビジネス需要寄りですが、前者はホテル自体が名所になっていることからも、一般旅行客向けの有力商材となっています。
移動と買物のワンストップ性を高めると、買い物効率と時間効率を高めることになるので、消費者はメリットを感じやすくなります。通勤の合間に途中下車して徒歩15分向こうの商業ビルで買い物……はちょっと大変ですが、駅の出口をひとつ変えるくらいならそれほど面倒ではありません。
成長限界に達している運輸事業については、安全品質を大事にしつつ、成長よりも事業運営に必要な利益の確保に力を入れています。本稿の最後に全体の数字を紹介しますが、いわゆる減収増益になっています。
沿線ビジネスは売上成長の柱として期待されていますが、位置付けの重要度は素直にWebサイトにも出ていて、JR西日本の場合は関連事業のページに大阪ステーションシティへのリンクが目立つところに貼られています。JR東日本の場合は、企業情報の欄に役員一覧やグループ会社一覧と同列レベルに生活サービス事業全体へのリンクが貼られています。
このような見せ方は「会社の力の入れようを示している」と言ってもいいでしょう。もちろん事業ビジョンや戦略方針などが書かれたIR資料でも重点分野として扱われています。
小売業に関わる人と話をしていても、スーパーや百貨店、コンビニといった従来業態と並んで駅前開発やステーションシティの動向が話題になるのは珍しくありません。駅という制約上、エリアを順に端からは攻めていくのは難しいですが、立派なリテールチャネルとして認識されていると言えます。
鉄道会社が小売り分野でのスタープレイヤー……というのはヘンな感じもしますが、「JR東日本って何屋さん?」というシンプルな問いに「鉄道業」「運輸業」とだけ答えるのは、もしこれが受験問題だとしたら50点で不合格、という時代になっているのではないでしょうか。
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