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コラム

鉄道の不祥事から、何を学べばいいのか杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)

JR貨物で「機関車の安全装置が働かないまま6年間も稼働していた」と報じられた。同じ日、三重県の三岐鉄道で電車が脱線した。こういう報道があったとき、野次馬になるか、教訓とするか。あなたはどちらだろうか。

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鶴見事故、50年目の慰霊祭

 こうした対策が進められる中、約1年半後の1963年11月9日、今度は東海道本線鶴見駅付近の踏切で「鶴見事故」が起きた。東海道本線の貨物線を走行中の貨物列車が脱線。貨車が旅客線側にはみ出した。そこに両方向からの旅客列車が衝突。死者161名、重軽傷者120名の大惨事となった。三河島事故の教訓から発煙筒が使われたものの、悪天候で目視しづらい上に、火はすぐに消えてしまったという。防護無線の開発は間に合わなかったようだ。

 2012年11月9日、JR東日本は鶴見事故の慰霊法要を開催している。23回忌で鉄道会社主催の法要は終わっていたが、事故からちょうど50年の節目に、被害者遺族とともに安全を誓った。場所は鶴見事故の遺体が搬送された総持寺だ。この寺には慰霊碑があり、いまでも供養の法要が継続されているそうだ。余談だが、ここは俳優、石原裕次郎の墓所でもある。

 この法要が、JR貨物の機関車の不祥事報道と三岐鉄道の脱線事故の翌日とは、なんとも皮肉なタイミングであった。

安全装置は「動作確認」と「定期点検」と「継続的改良」が必要

 防護無線が整備されてから、鉄道事故の二次災害は激減した。2005年のJR福知山線脱線事故では、架線も切断されたため、停電で当該列車の車掌は防護無線が使えなかった。しかし、沿線の目撃者が踏切の警報ボタンを押し、それで異常を察知した対向列車の運転士が防護無線を発報。二重衝突が回避された。その後、防護無線は停電時にバッテリーで駆動できるよう改良されているという。


福知山線脱線事故現場。JR西日本はこのマンションの一部を残して取り壊し、慰霊碑を置き、周囲に植樹する案を遺族と被害者に提案したとのこと

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