「市長、俺だよ俺!」 千葉市の税金を滞納する人々:最年少政令市長が経験した地方政治改革(3)(3/3 ページ)
政令市長として史上最年少の31歳で千葉市長に就任した熊谷俊人氏。千葉市は市税の徴収にあたり、認められていない基準を作って未納者を切っていたため、徴収率が他市より極端に低くなっていたという。
責任を持って全体調整できる部署がなかった
熊谷 資産経営ではいろんな施設を持っているのですが、各局が個別に管理していて、全体として最適化することがありませんでした。今、学校の統廃合が進んでいるのですが、3つの学校を1つにすると、2つが空きます。すると、地元は必ず「地元のための施設を作ってくれ」と言ってきます。自治会のための施設や多目的ホール、子どもを預けられる遊戯館、特別養護老人ホームなどを作ってくれと言ってくるわけです。そこに議員も絡んできます。
つまり、行政には跡地活用という言葉があるんです。民間の常識では、ある施設が古くなって、別のところに建て替えたら、元の方は売りますよね。でも、活用しちゃうんです。すると、施設が古くなって更新するたびに公共施設が増えていくんです。人口が増えていたからこういう発想なのですが、いまだにこういう発想から地元も抜けきれないでいて、いつも活用案を持ってくるわけです。これを売ると、地元の自治会の人たちからすごく怒られるんです。だから、跡地活用が増えてしまう。無理に活用ありきで進めず、売却や貸し付けも選択肢としていくべきと言っています。
面白かったのは3つの学校が統廃合して1つになり、余った2つのうち1つは売って、1つは跡地活用することになった時のことです。行政にはトータルパッケージで考える部署が存在しなかったので、ある局長が「前からうちの局の課題だった○○を作る土地ができたので、ここに作らせてください」と言ってきて、「いいけど、これ全体的な調整はしてるの?」と聞くと、「いや、それはうちが考えることじゃないんで」と答えて、「土地が余っていてちょうど良かった」みたいな形になってしまうわけです。
一応、全体調整する部署はありますが、責任を持てる部署ではなかったので、全部市長がコントロールするのは限界があるということで資産経営部を作って、全体最適化をしています。民間では当たり前の話ですが、ようやくそれができるようになったということです。
広告料を稼ぐということで、千葉ロッテマリーンズの本拠地は千葉マリンスタジアムといっていたのですが、ネーミングライツを導入しました。プロ野球のスタジアムはネーミングライツとして、とても高い値段が付くんです。だから、「絶対ネーミングライツにした方がいい」という話をしたら、「いや、マリンスタジアムというのは20年前に市民の公募によって付けられた名称なので変えられません」という話が出ました。
でも、それは20年前の話であって、私も千葉ロッテマリーンズの昔からのファンですから、「マリンという名前さえ残れば、そんなにこだわらないんじゃないかな。球団がなくなったり、市が球場をボロボロにするよりはマシだと思いますよ」ということで、これは1年くらい市の職員も抵抗しましたが、やるということになって、一生懸命営業したら、QVCジャパンというテレビ通販会社が10年で27億5000万円という巨大な契約を提示してきて提携しています。
これだけの分の税金を使わなくて済むのですから、非常に大きな話です。ほかにも民間の人たちに広告を集めさせていろんな発行物を事実上0円で発行するとか、いろんなことをやるようになりました。
私が就任してから、創意工夫でコスト削減したり収入を確保したりしたら、そのお金全部か半分を翌年度のその部署の自由予算として渡すというインセンティブ予算を始めました。そういうのがあるので「何かお金を稼ごう」といろんなアイデアが出てくるようになりました。
財政状況の推移ですが、右肩上がりで増えていた借金が、ようやくここにきて減り始めて、これから返していくことになります。何十年もかけて増えた借金なので、すぐには消えなくて、むしろこれから高齢化が始まって、どんどんお金がかかってくるので、減らす方が時間がかかるんですね。
連結の財務諸表と言われている将来負担比率と実質公債費比率も少しずつ下がっています。平成24〜26年度くらいをしっかり頑張れば、平成28〜29年度くらいにはまともな財政状況に戻るだろうと予測しています。それだけ時間はかかるということです。
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