コラム
おせっかいな「規制」は、人を幸せにするのか:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
世の中には「おせっかい」とも言える“規制”がたくさんある。例えば「これは食べてはいけない」とか「これ以上、お金を借りてはいけない」とか。もちろん規制によって救われる人たちもいるが、過剰な縛りは人間を不幸に導いているのではないだろうか。
人類の進化は終わった?
当たり前の話だが、人類が槍やら石で獲物を追いかけ回していた時代は「規制」などない。危ないことは各自で判断をして回避をした。これを食べると身体によくないとか、おかしな行動をとったら死を招くとか、すべては「自業自得」の論理で動く。だからみな必死に考えた。生きるために毎日脳みそから汗をかくぐらいにフル回転をさせていたはずだ。
「規制」によって確かに救われる人もいる。これは紛れもない事実だ。が、この甘美な響きは、人間から「善悪の判断をする」という能力も奪っていることも忘れてはいけない。
例えば、先の「危害等」の調査で60歳女性は消費者庁にこんな相談をしたという。
乗馬型の運動器具を運動不足解消目的で購入した。朝晩15分ずつ使用すると健康によいと聞いたので使用したところ、半年ぐらいで腰痛になった。いったん使用をやめ、腰痛が治ってから再び器具を使用したところ、また腰痛になった。
「健康によい」という宣伝文句にダマされた、というわけだ。ただ、健康器具の「規制」を問題提起する前に、もっと大事なことを言ってもらいたい。
生物にとって「痛み」とは危険を回避するシグナルだ。それを無視して、なぜ宣伝文句を鵜呑みに身を滅ぼすまで突き進むのか。「自分で考えて判断する」というのはどこにすっ飛んでしまったのか。
やはり人類の進化はだいぶ昔に終わっているのかもしれない。
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