今、“ロイヤリティ経営”が注目されるワケ:儲かっている企業にはワケがある(2/4 ページ)
既存顧客の満足度を高めることで、リピート率を高めることに重点を置く“ロイヤリティ経営”が近年、注目されています。インターネット接続サービスの朝日ネットを例に、その実現メリットを解説します。
朝日ネットにみるロイヤリティ経営の流れ
大手でも厳しい中、どうして朝日ネットは優れた財務成績を残せたのでしょうか。冒頭で触れた通り、そのからくりはロイヤリティ経営がうまくいっていることにあります。具体的には次の3つのポイントからそれが言えます。
1.低い退会率
2.広告を打たない=出費が少ない
3.既存顧客からの紹介や評判により、新規会員が増えている
退会率については、同社の開示資料から1%以下と安定して低い数字となっているのがうかがえます。一般的に、新規顧客を獲得するためのコストは、既存顧客を維持するためのコストより高いと言われます。業界や状況によっても異なりますが、おおむね5倍程度とされます。つまり、退会率1%の企業と3%の企業では2%の差だけにみえますが、その分の新規顧客を獲得しようとすると、その5倍の差がコスト面で表れるということです。
問題は朝日ネットがどのようにしてこの数字を実現させているかです。同社の山本公哉社長に経営方針についてうかがったことがあるのですが、ひと言でまとめると「広告出費は行わず、その分をサービス品質の向上と顧客サポートに振り向ける」となります。
インターネット接続サービスは、携帯電話業界のように新しい端末が発表されたり、新発想のサービスが出てきたりといったイノベーションが続々と出てくる領域ではありません。電話回線の接続からADSL、光接続と速度競争はありますが、あとはサービスへの満足度合いから新規契約の選択や、継続利用の判断を顧客は行います。
この顧客の利用特性を踏まえてビジネスサイクルを整理すると、次のようになります。
(1)安定したサービス品質と質の良いサポートから既存顧客は離反せず継続する
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(2)既存顧客の流出が少ないので、事業規模を維持するために必要な新規顧客獲得のハードルが低くなる=新規顧客獲得用の宣伝費、販管費が恒常的に発生することがない
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(3)同社の場合は既存顧客の評判や口コミから宣伝費をかけずに新規顧客が入ってくる状態になっている
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(4)安定して得られる利益をサービスやサポートへの原資にできるので(1)が実現できる
仕組みや理屈としてはシンプルです。しかし、こうした顧客満足度とロイヤリティを重視する動きは各所で生まれつつあるのですが、典型的な「言うは易し、行うは難し」の経営課題であるため、実際に事業成果に結びつけるのは簡単ではありません。
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