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コラム

信金立てこもり事件に見る、過熱報道の危険性相場英雄の時事日想(3/3 ページ)

愛知県豊川市の信用金庫で立てこもり事件が発生した。愛知県警の捜査員が支店に突入し、事件は一件落着したが、違和感も覚えた。それは、なぜこの事件が“報道協定”の扱いにならなかったのかということだ。

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 今回の立てこもり事件についても、ネット中継という新たな情報伝達手段が現れ、多くの視聴者がライブで捜査の過程を注視した。

 私自身、誘拐に関するミステリーを記した経験がある。もちろん、誘拐捜査に携わったことのある捜査員に話を聞き、捜査上の盲点まで聞き出すことができた。だが、実地で聞いた“盲点”について小説で触れることはなかった。フィクションとはいえ、将来起こりうる犯罪に加担することはできないとの思いを強くしたからに他ならない。

 「単純な聞き込み捜査の過程をTwitterでつぶやかれるのはある程度仕方がない。だが、誘拐や立てこもりの場合、下手にネットで可視化されたら、それは即時人質の生命の危険に直結する」とは先の捜査員の言葉だ。

 新聞協会の「報道協定」に関する見解はこちらをご覧いただきたい(参照リンク)。警察という組織は、とかく情報を内側に囲い込む。この点を追及するのがマスコミの責務なのは間違いない。ただ、誘拐や立てこもりなど特殊犯罪は別だ。事件は現在進行形で動く。その過程で人質の生命はリスクにさらされ続けることになる。

 ネットを通じた情報伝達手段が多様化しているのに合わせ、早急に見直しを図る時期にきていると考えるのは、筆者だけだろうか。

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