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コラム

鉄道のトンネルは、安全なのか杉山淳一の時事日想(1/4 ページ)

中央高速道路の笹子トンネルで天井に張られたコンクリート板が崩れ落ちるという、残念な事故が起きた。鉄道にもトンネルがあり、過去にいくつも事故を経験している。現在の鉄道トンネルの安全性はどうなっているのだろうか。

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杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 中央高速道路の笹子トンネルで天井に張られたコンリート板が崩れ落ちた。鉄道にもトンネルがあるが、同じような事故は起きるのだろうか。答えは「起きない」。なぜそう断言できるかというと、笹子トンネルのように天井板を持つトンネルは鉄道にはないからだ。笹子トンネルの天井板は、トンネル断面を仕切り、トンネル内に新鮮な空気を送り、排気ガスで汚れた空気を吐き出す役目があるという。自動車は個々の車両が排気ガスを出し、客室が密閉されていないから、トンネルごと換気が必要になる。

 短い自動車トンネルはトンネル内にファンを設置して、強制的に空気の流れを作っている。ただしこの方式は長大トンネルには向かないので、トンネル断面の未使用な空間に換気路を作る。そのための仕切り板が天井板だ。

鉄道トンネルは列車が換気する

 鉄道トンネルの場合は換気用の天井板を作らない。これにはいろいろな要素があって、まず、古い鉄道路線はトンネルをなるべく作らなかった。蒸気機関車の煙とトンネルの相性が良くないことは自明だし、トンネル技術も未熟なため、手掘りだと工数がかかり費用もかさむ。だからなるべくトンネルを作らずに山を越えようとして、切通し(山を切り開いて通した線路)やループ線(勾配を緩くするため、線路をループ状にする方法)、スイッチバック(急な斜面を登るために、折り返し進むように敷かれている線路)が作られた。

 トンネル技術が発達しコストが低くなるころには電化路線が主流となっている。それでも車両火災対策の換気装置や消火装置は必要だが、天井板を使うほどの大きな換気システムはいらない。むしろ列車自体が換気装置と言ってもいい。トンネル断面は列車の建築限界に合わせているから、列車が通過すれば古い空気を押し出し、新しい空気が入り込むことになる。ただ、逆にそれがトンネル衝撃波として問題になっている。

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