鉄道のトンネルは、安全なのか:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
中央高速道路の笹子トンネルで天井に張られたコンクリート板が崩れ落ちるという、残念な事故が起きた。鉄道にもトンネルがあり、過去にいくつも事故を経験している。現在の鉄道トンネルの安全性はどうなっているのだろうか。
東海道新幹線は大規模修繕を予定
コンクリート構造物の耐用年数は50年とされている。50年と言えば、1964年に開業した東海道新幹線が2014年に開業50周年を迎える。JR東海はもちろん記念行事を考えているだろうが、実は補修対策のほうが重要な検討事項になっている。東海道新幹線は1959年の着工からわずか5年で開業した。その突貫工事のひずみがいくつか露呈され、1976年から1981年にかけて、水曜日の午前中を運休させた若返り工事を43回も実施した。時刻表やポスターで、0系先頭車のキャラクターがレンチを持ったイラストが使われていた。
それでも次の大補修が必要だ。現在、JR東海は軌道試験車両「ドクターイエロー」を10日ごとに走らせるほか、N700系にも軌道形状試験装置を搭載し、2009年から営業走行中に軌道点検も実施している。
さらに、2018年からは鉄橋、コンクリート橋、トンネルの大規模補修を実施する計画だ。費用の総額は1兆円以上になる。JR東海は総費用の半分を積み立てる計画で、2002年から2017年まで新幹線鉄道大規模改修引当金を計上している。この計画は国が「全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律」を成立させて支援しており、新幹線鉄道大規模改修準備金として損金(法人税の対象から免除)扱いとなっている。
JR東海がリニア中央新幹線の整備を急ぐ理由は、東海道新幹線の大規模修繕による代替輸送機関としての意味合いも含まれている。
鉄道の安全は事故の教訓が作り上げた。高速道路もそうだろう。どんなに対策を施しても、新たな、思いがけない原因で事故は起きる。私たちはそのひとつひとつを受け止めて、「完全なる安全」を追及しなくてはいけない。遠まわしに言うならば、危険を予知できて、その対策のめどが立たないという道具があるなら、その道具は使わない。これがもっとも確実な安全対策であろう。
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