「ドライゼロ」のヒットを導いた王道マーケティングリサーチ(2/2 ページ)
アサヒビールのノンアルコールビール「ドライゼロ」のヒットの影には、オーソドックスなマーケティングリサーチに基づく明快なコンセプト開発がありました。
コンセプトはシンプルでいい
さて、こうしてドライゼロの開発プロセス、また、「ビールの代替品」というコンセプトを後から振り返ってみると、実に平凡で当たり前だと感じるかもしれません。
しかし、多くの消費者に受け入れられ、ロングセラーになるような製品ほど、コンセプトは単純でシンプルなものです。そして、その製品は、人々の単純な欲求を充たしているだけ、あるいは単純な問題を解決しているだけなのです。
例えば「甘栗むいちゃいました」という製品は、栗の皮をむく手間を省いただけですね。
「栗は食べたいけど皮をむくのが面倒」という単純な問題を解決した、ありそうでなかった製品ですよね。しかし、「甘栗むいちゃいました」や、その類似製品は既に定番商品として、コンビニ、スーパー等の棚に並んでいます。おかげで、栗の消費量が大きく拡大したのではないでしょうか。
ドライゼロも同じでしょう。例えば、「明日は定期健診だからアルコールは控えよう。 でも、大好きなビールは飲めないのは残念だ。だから、ビールを飲んでる気分になれるノンアルコールビールが欲しい」といった消費者の単純な欲求に応えることができたからこそのヒットしたのでしょう。
なお、アサヒのマーケティング部では、IBMの統計解析ツール「SPSS Statistics」を導入しています。同社では、調査会社任せにすることなく、担当者自らがデータと向かい合うため、3年前からマーケターの分析能力強化に取り組んでいるのです。
ドライゼロ開発のためのリサーチにおいても、担当者自ら、調査データを徹底的に分析したおかげで、シンプルながら明快なコンセプトを自信を持って打ち出せたのでしょうね。(松尾順)
*上記内容は、日経情報ストラテジー(January 2013)の記事を参考にしました。
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