コラム
“マル獄シリーズ”が人気、拡大する刑務所発ブランド(2/2 ページ)
刑務作業で作られる家具や革靴といった製品。しかし、昨今の不景気やグローバル化などで売れ行きが低迷していることから、人気キャラクターを採用したり、ブランディングに取り組む刑務所が登場しているのです。
刑務所のオリジナルブランドを開発
一方、オリジナルブランドを開発して、爆発的な売上を記録しているのが、函館少年刑務所の「マル獄シリーズ」。チョイ不良(ワル)風の布製品で、刑務作業品としては初めて「登録商標」を行っています。マル獄シリーズは毎年ラインアップを拡大、現在は55品目に上っています。
さて、「マル獄シリーズ」成功のヒミツは、刑務作業を担当する刑務官が、従来の刑務作業の概念を打ち砕いたことにあったようです。
それは刑務作業品のネガティブなイメージを逆手にとったこと。また、民間のデザイナーのアドバイスを受け、時代のニーズを取り込んでいること。若年層を意識することで、ネットでのクチコミも生んでいること、などです。
前述したように、従来、刑務所は近辺の中小企業から仕事をもらっていたのです。要するに、「下請け」の仕事をやっていた。
しかし、函館少年刑務所では、仕事をもらうのではなく、自らオリジナルな製品を開発し、「マル獄シリーズ」というブランドを育てることに取り組んだことで新たな活路を見出したわけです。
今、多くの企業が製品の差別化に苦労し、売上確保に汲々(きゅうきゅう)としていますが、刑務作業品においてもブランド化が可能であるという事実は、大いに参考にすべきではないでしょうか。(松尾順)
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