路面電車はシャッター街を救えるのか:杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)
福井鉄道の福井駅前電停をJR福井駅に近づけるため、約150メートル延伸することが決まった。しかし、この計画に福井駅西側の商店街などが反発している。その背景には、地方の商店街が抱える「シャッター街化」の悩みがある。
商店街こそ路面電車を生かした街づくりを
一方、商店街からも新たな提案がほしい。私は学生時代に信州のある地方商店街の活性化プロジェクトに参加させていただき、社会勉強をした。その街は戦前から映画館や写真館があり、ハイカラな人々で賑わったところ。しかし町の中心が駅前に移り、寂れてしまったシャッター街。しかし、寂れた理由は駅の開業でもモータリゼーションでもなかった。それらは間接的な理由で、本当は「意欲のある後継者がいなくなった」からだ。
かつて賑わった商店街は、店主たちに栄華の記憶が残っている。1代で成功した店主はなおさらだ。その成功経験があるから、2代目の新しい意見に耳を貸さない。「オレはこのやり方でうまくやってきた。そしてお前たちも育て上げた。だからいままで通りでいいんだ」こうして新しいアイデアを潰され、2代目、3代目は意欲をなくし、跡目を継がず会社員になってしまう。そして親の代の店は時代とズレていき、人通りが途絶えていく。福井の商店街がそうだとは言わないけれど、前述のような高齢な商店主が居座っているなら、敬意を持って新たな役割を担ってもらい、現場を若い人に譲ったほうがいい。
いまやネット社会であり、駅前だろうとロードサイドだろうと、量販店でさえも物販は厳しい状況にある。商店が生き残るためには、ネットでは得られない体験が必要だ。実際の店舗業態は人と人が直接出会うサービスが適していて、突き詰めれば風俗になってしまう。しかし、そこまでしなくても、例えば食の分野にはネットにない可能性がある。大阪の商店街ではアツアツのたこ焼きが買えるし、「ソースのタレ、2度づけ禁止」の串揚げ屋に人々が集まる。東京でも賑わっている商店街は夕方にお惣菜屋からいい香りが漂ってくる。こういう体験はスマホやPCの画面ではできない。
路面電車の延伸が商店街の衰退の原因になるというけれど、既に衰退は始まっている。路面電車を言いワケとせず、むしろ路面電車をチャンスとして活性化を考えてほしい。
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