購買部門に見るカルビーの成功、シャープの苦悩(2/2 ページ)
業績回復を実現し、東証一部上場も果たしたカルビー。購買部門を作り、集中購買を進めたこともその一因となったようです。
カルビーの成功
一方、最近テレビや新聞などでも取り上げられており、業績回復がうまくいった事例がカルビーです。カルビーは2009年2月に社外から米ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人社長を9年間務めた松本晃氏をCEO兼会長に招聘しました。松本会長はその後2011年3月に東証一部上場を果たし、急速に増益を果たすなどで各方面から称賛されている経営のプロです。
日経新聞に松本会長とカルビーに関する興味深い記事が出ています。2009年6月の会長就任時に松本氏は6つの成長戦略を表明し、特に海外市場の開拓でグローバルカンパニーを目指し新たな付加価値や成長を前提とした経営をしていくことを強調しています。一方で松本氏が会長就任後、まず手掛けたことは購買部門を作ることでした。
「利益を増やすためにはコスト削減が必要だった。まず東京の本社に購買部門を設け、原則としてそこを通さないと原材料や資材が買えなくした。一括購入で値段を下げ、余分な買い物を減らした。」(2012年9月12日、日経新聞より)
松本氏はもともと創業家カンパニーであったカルビーの従来のやり方自体を否定せず、戦う舞台を変え、不要なコストを削り、求められる機能を充実化する方法で社員の理解を得ながら改革を進めていったのです。
ここで注目すべきなのは、当たり前に購買部門を作り集中購買を進めたことです。調達・購買を集中化することは欧米企業では極めて当たり前なことです。多くの経営手法がある中でのいろはの「い」なのです。
集中購買なんて当たり前じゃないか、うちもやっている、と思われる方も多いでしょう。しかし多くの日本のリーディングカンパニーが掛け声はかけたものの実質分散購買のまま、というのが実態です。その一因として挙げられるのは意識の問題だと思います。
コスト削減=安かろう、悪かろうという画一的な理解。また、コスト削減=無理なコストを押し付ける、というような社会的なネガティブな印象は依然存在するのです。無理なコストを押しつけるようなやり方は論外です。安かろう、悪かろうではなく総合的に最適な買い物をする、こんなのは調達・購買のいろはの「い」です。経営機能として一括購入の仕組みを作り、買う側、売る側にとってお互いにメリットがあるやり方はいくらでも考えられるのです。
松本氏のような経営のプロが日本でも多く出てきて「集中購買=当たり前でしょ」というような時代になりつつあるのだと実感しております。(野町直弘)
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