安倍自民が進むのは“いつか来た道”になるのか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
国会での首班指名に先立って、今後打つ手を明らかにしている自民党の安倍総裁。その目指す道は、“いつか来た道”になるのだろうか。
国際収支の赤字をどうするか
それにもう1つ気になることがある。日本の国際収支だ。昨年、日本は32年ぶりの貿易赤字に陥った。その原因は、東日本大震災とタイの洪水でサプライチェーンが大打撃を受けたこと、さらに原発が停止してLNGの輸入が増えたことだと説明された。そして今年、いかに中国との関係が悪化したとはいえ、昨年を上回る6兆円という貿易赤字になろうとしている。
それでもまだ日本は250兆円を超える対外純資産を保有している(日本国内への外資の投資額が少ないことの裏返しでもあるが)。これに伴う収入が所得収支ということになるが、この金額が大きい。年間では13兆円ほど。少なくとも現段階では貿易収支が赤字でも、全体を合わせた経常収支は黒字を保っている。しかしあと何年黒字で保てるのだろうか。このまま企業の海外進出や工場移転が続けば、貿易赤字が年間10兆円を超え、やがて経常収支まで赤字に転ずるかもしれない。
それが何を意味するか。日本政府の財政赤字を日本人がファイナンスすることができなくなり、現在はまだ10%にも達していない国債の外国人保有率が、上昇する。そうなったら、日本の国債にはより厳しい市場原理、国際投資家の論理が突きつけられることになる。海外のヘッジファンドはいまそれを狙ってもうけることを狙っている。それがさらに国債暴落の引き金を引くという見方もある。
もちろん、日本に打つ手がまったくなくなったとは思わない。しかし財政を再建し、経済成長を促進する道があるとしても、それは非常に狭い道なのである。細心の注意を払いつつ、なおかつ独創的な(世界がまだ経験したことがないからだ)道を探さなければならないのだと思う。
安倍総裁が前のめりに推し進めようとしている道が、「いつか来た道」でないことを祈るばかりだが、内閣の予想される顔ぶれを見る限り、あまり期待は持てそうにない。ただこの内閣が失敗すると、そこに待ち構えているのはアメリカの「財政の崖」どころではない、とんでもない深淵かもしれないのである。
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