初音ミクと日本のクリエイティビティ:中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(2/2 ページ)
世界が日本を最もクリエイティブな国と評価しているのに、日本はそう思っていない。まずはそれが問題だ。
課題は、第2、第3の初音ミクをどう生んでいくのか、長期的な環境を整備することだ。たまたま生まれ、みんなで育てた初音ミク。こんなイノベーティブなよい子を、最も生み続けたい。そのメカニズムを国内に確立したい。
日本のクリエイティビティが育つことに期待がかかる。ところが、冒頭のアンケート結果は2つの問題も明らかにしている。
まずは日本の自己評価が低いこと。他国が日本を評価しているのに比べ、日本のみが自分をクリエイティブだと思っていない。自らがクリエイティブだと考えている比率もダントツの最下位。米国人は52%が自分をクリエイティブと思っているのに、日本人は19%!
ずっとそうなんだな。ジャーナリストのダグラス・マッグレイ氏が2002年、フォーリン・ポリシー誌に「Japan’s Gross National Cool」を掲載、日本のポップカルチャーを高く持ち上げた。いわゆる「クールジャパン」の嚆矢(こうし)となったレポートだ。当時僕らも盛んにこうした自己評価を発信していたが、海外からの1レポートによる評価の方が浸透力が高かった。ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授がソフトパワー論で後付けしたのも効いた。
だからこれを自らのエネルギーに転化するのにてこずっている。ポップカルチャーのパワーを発揮する自家発電力がなかなか湧いてこない。今回の調査でも、自分の持ち物を正当に評価できないさまが見てとれる。
それ以上にマズいのは、「創造力が経済成長のカギになると答えたのも日本が最下位」という結果だ。じゃ、みんなは何で食っていこうと思ってるのだろう。資源も、低廉な労働力もないというのに。資源はアラブやロシアや中国で、労働力は中国やインドで、じゃあ僕らはどうするというんだろう。知恵しかないんじゃないだろうか。
アメリカは1980年代、クルマや家電のクリエイティビティで日本に負けたけど、1990年代以降、ITのクリエイティビティで巻き返した。日本はどのクリエイティビティを発揮していけばいいんだろう。
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